【Quintet】

『わかったから泣くな。沙羅に貸した漫画、返ってきてないのが三冊くらいあるぞ。早く返せよ』
「続き……貸してくれる?」
『貸すから。いくらでも貸すから泣くな』

しゃくりあげて泣く沙羅を慰めながら海斗は笑っていた。

『兄貴とダメになった時はすぐに言えよ。今度は俺が貰う』
「星夜と同じこと言う……」
『女タラシの星夜と一緒にするな。星夜に何言われた?』
「“浮気したくなったらいつでもおいで”って」
『その時は星夜じゃなくて俺のところに来い。浮気したくなくてもいつでも来い』

 頷いてはいけないのに頷いてしまうのは、今後も海斗との関係が続けられる嬉しさの震え。彼は泣き虫な沙羅を抱き締めた。

『俺に彼女ができてもヤキモチ妬くなよー?』
「妬いちゃうかも……」
『沙羅のそういう素直なとこが好き』

ふにふにと海斗に両頬をつねられた。つねられた頬をまんじゅうのように膨らませる沙羅とそれを見て意地悪く微笑む海斗の側を夜風が通り抜ける。

 優しい涼秋《りょうしゅう》の風が沙羅の涙を乾かしてくれた。