【Quintet】

『お前が何でもかんでも水色にこだわるのは沙羅が見えたお前の音の色が水色だったから。お前が年上の女を食い散らかしてきたのは年下だと沙羅を思い出して辛くなるから。それくらい沙羅が好きなんだよ。悠真は昔の沙羅も今の沙羅もひっくるめて好きなんだろ?』
『ああ。沙羅は昔と変わらないけど、今の沙羅を知ってもっと好きになってた』

おかえりなさいと迎えてくれる温かい笑顔。
ピアノと向き合う真摯な眼差し。
何事にも一生懸命で頑張り屋。
寂しがりのヤキモチ妬き。
悠真は沙羅にもう一度、恋をした。

『沙羅も同じだと思う。初恋関係なく今の悠真に恋したんじゃねぇの? 傷付けるかもなんて先のこと心配して怖がるなよ。もっと自信持て』

 晴に指摘されて気が付いた。本当は自信がなかったんだ。

“初恋のゆうくん”の幻影に捕らわれているのは沙羅ではなく自分だ。昔と変わった自分を知られて幻滅されるくらいなら海斗か星夜の側で笑っている沙羅を見守る方がいいと……。
本当にそれでいい?

『両想いなのに付き合わなかった後悔はキツイぞ。コレは経験者の言葉』

 物言わぬ悠真を置いて晴は去った。
由芽と友人関係を保ち続けた晴の選択が今ならわかる。
好きだから欲しくて、でも好きだから傷付けたくなくて、好きだから遠ざけた。

 好き過ぎて狂いそうな恋もいつかは愛に変わるだろうか?
愛に変われば、もう少しうまく、愛せるようになるだろうか?

(俺は晴と違って器用じゃねぇんだよ……)

 自分の不器用さに嫌気が差す。再びソファーに横になった悠真は恋しい人の名を溜息に忍ばせた。