【Quintet】

 アイスティーを注いだ二つのグラスがテーブルに置かれる。沙羅がリビングに戻った時、織江は膝の上に広げたファッション誌をぼうっと眺めていた。

「……沙羅」
「なに?」
「彼氏と同棲してるの?」

これが青天の霹靂? 窓から槍? 藪から棒?
隠せるだけの男物は隠したはずだ。この部屋に男の存在を匂わせる物は在りはしないはず……。

「そこに入ってる雑誌、バイクの雑誌だよね?」

 沙羅は顔が真っ青になった。
リビングのマガジンラックは五人の共有スペース。沙羅のファッション誌の他にも悠真が愛読する文芸雑誌や音楽雑誌、星夜と海斗のファッション誌、晴のバイク雑誌が入っている。

マガジンラックは完全に盲点だった。

「沙羅のお父さんがバイクに乗るとは思えないし、沙羅もバイクの雑誌なんて読みそうにないよね。それにメンズのファッション誌もある。前に来た時よりもダイニングのテーブルも大きくなってる。彼氏と同棲してるんでしょ? だから私や学校の子達をここに来させないようになったんだよね」

 織江の口調は沙羅を責めるものではない。怒っている様子もない。

しかし無表情にアイスティーを飲んでいる織江に同居の話を切り出すには、沙羅には数十秒の沈黙の時間が必要だった。