【Quintet】

「……あっ!」

ゆっくり持ち上げた瞬間にこよりが切れて、沙羅が欲しかった薄いピンク色のヨーヨーは水面に落下した。

「落ちちゃった……」
『残念だったね。欲しいのひとつ貰っていって』
「貰えるんですか?」
『いいよ。お姉ちゃんが欲しかったのはこれかい?』

 沙羅の初めてのヨーヨー釣りを見守っていた店主は沙羅が狙っていた薄いピンクのヨーヨーを水から出して渡してくれた。
失敗してもひとつ貰えるシステムは知らなかった。

 隣の悠真は難なく黒いヨーヨーを釣り上げている。本当になんでも出来る男だ。

「悠真に出来ないことってあるの?」
『俺だって釣り上げる瞬間はヒヤッとしたよ』

彼が釣り上げた黒いヨーヨーはピンク、白、黄色のラインが入っていて大人っぽい。沙羅のヨーヨーは透明な薄いピンクにカラフルなドット模様が入っている。

『これを、こうして……』

 悠真は輪ゴムを指に通して、ゴムの伸び縮みを利用して水風船を跳ねさせた。沙羅も真似して遊んでみる。
二つの水風船が夏の空気を泳いでいた。

『沙羅、悠真! ここにいたか』
『ん。兄貴のビールも買ってきた』
『珍しく気が利くな』

 星夜は沙羅用にラムネを、海斗はビールの缶を持っている。人混みを外れた場所で四人は祭りで歩き疲れた足を休めた。