【Quintet】

「……私も花音さんが悠真達のイトコって知ってホッとしたんです。知らない女の人の名前が出てモヤモヤしちゃって」
「わかるよ。私も同じ。好きな人に自分の知らない世界があると悲しくなるよね。仕方がないことなのに、気になっちゃう」
「はい。だけど私は花音さんみたいにはなれない……。晴だけを想い続けてる花音さんとは違うんです。悠真も海斗も星夜も、みんな好きな私は花音さんとは違う……」

 まだ日が高い午後5時の表参道。道行く人の中には二人と同じ浴衣姿の女性やデート中のお洒落なカップルもいる。

誰もが好きな人はひとり。好きな人が三人いる自分はおかしい。

「今は“みんな好き”でいいと思う。そのうち自然と誰が本当に好きなのか答えが出てくるよ。それを悠兄達は待ってくれてる。だから今は無理して答えを出さなくていいんだよ」
「いいんでしょうか……。待たせているのはみんなに失礼な気がして苦しくて……」
「いいんだよ。晴だってそう。私の想いは晴に伝えた。あとは晴の答えを待つだけ。晴はいつか答えを出してくれるってわかってるから待てるんだ。私なんか、16歳の時から晴を待ってるんだよ?」

うつむく沙羅の前髪に花音が触れた。彼女は少し汗ばんだ沙羅の額にかかる前髪を優しく避けた。