【Quintet】

 ヘアメイクと着付けを終えた沙羅と花音は花音の母親に見送られて表参道駅までの道を歩く。

「正直ね、晴達が女の子と同居してるって聞いた時はあのマンションに行くのが怖かったんだ。悠兄《ゆうにい》と海斗の好きな女の子の“サラちゃん”の噂は昔から聞いてたけど、どんな子なんだろ、可愛いかったらヤダな……とか、色々考えちゃった」

 沙羅の隣を歩く花音の浴衣は淡いラベンダー地に紺色の桔梗とクリームイエローのダリアが散っている。帯も濃紺で大人っぽい雰囲気だ。

4年後に沙羅が今の花音と同じ年になったとしても、花音のような大人な柄の浴衣は選べない。
高身長美人の花音だから着こなせる柄だ。

「でも実際に沙羅ちゃんに会ったらそんな不安吹き飛んでて沙羅ちゃんがもう可愛くて可愛くて、これは悠兄達も溺愛するわぁって納得。私が男でも沙羅ちゃんを好きになってるもん」
「そんな……私は全然、可愛くもないですし……」

謙遜する沙羅を見つめる花音の眼差しは優しい。性格は違っても内に秘める優しさはイトコの悠真と海斗と似ていた。

「一緒に住んでいても沙羅ちゃんが晴を恋愛対象から外してくれてて安心したの。晴も沙羅ちゃんのことは妹みたいに思ってるって知ってホッとした。もしも晴が沙羅ちゃんを好きになってたらこんなに優しくできなかったかもなぁ。由芽ちゃんにだって、やっぱり嫉妬はあったんだ。由芽ちゃんのことは大好きな友達だったけど晴に恋してもらえてる由芽ちゃんが羨ましかった」

 空を見上げる花音の横顔は昼と夜の間の曖昧な光に照らされて美しい。
ひたむきで正直者、花音は真っ直ぐな人だった。