【Quintet】

『俺は日向にはいねぇよ。俺の周りが日向にいる奴らだからそう見えるだけだ』
『らしくねぇ謙遜するな。お前は昔から日向にいた。由芽も日陰の俺より日向のお前が好きだった。わかってんだろ? 由芽はお前が好きだったんだ』

 明かされた十年越しの真実に晴が動じる気配はない。
由芽を側で見てきた晴と律。いつも一緒にいた二人には彼女の本当の気持ちがわかっていた。由芽が本当は誰が好きか。

『由芽が選んだのは律だろ』
『それは俺を傷付けたくないための由芽の優しさだ。俺を傷付けたくないから付き合ってくれただけだ』

 晴は由芽と友達でいたかった。由芽は律を傷付けたくなかった。律は由芽が晴を好きだと知りながら告白した。

晴と律と由芽。中学生ゆえの不器用で残酷な選択が当時の彼らの精一杯だった。

『俺は晴も由芽も眩しかった。お前は俺と同じように教師に反抗してたって結局はいつも教師に信頼されてた。由芽も何かあると俺じゃなくてお前を頼った。俺は晴や由芽みたいに頭良くねぇから偏差値高い高校には行けなかったし、こんな風にしか生きられない。由芽も俺に愛想尽かして離れていった』
『……由芽の親のこと知ってるか?』

 沙羅の側を離れた晴が律と対峙した。扉を背にして立つ律と部屋の中央にいる晴。
晴は7年の歳月を経て律と再び向き合おうとしている。