【Quintet】

『どうせ晴や他の三人と毎晩ヤッてんだろ。見かけによらず凄そうだよね。晴達も外で遊べない代わりに家の中でヤリ放題。いい気なもんだ』
「皆とはそんな関係じゃ……」
『昨日は車の中でキスしてたのに? 今日も男に学校まで送ってもらってたよね。あんた筋金入りのお嬢様だもんな。男からオヒメサマ扱いしてもらって嬉しいんだろ?』

 ベッドを降りた律がこちらに近付いてきた。ソファーの隅で身を固くする沙羅は胸元に抱えたバッグを強く抱き締める。このバッグは晴からの誕生日プレゼントだ。

ソファーに律の体重が加わった。じりじりと距離を詰める律に対して沙羅ができる防御は律と自分の間をバッグで遮ることだけ。

『四人も相手にしてるなら俺も相手してよ。それとも晴が来てから三人でする?』
「だから……! 皆とはそんな関係じゃないんです!」

律に掴まれた肩は震えている。意外そうに目を見開いた律はうつむく沙羅を見下ろした。

『……まじに経験なし? 大学生で処女?』

 大学生で処女の何が悪いのか。律の小馬鹿にする笑いに腹が立つ。恋愛だけが人生のすべてではないのに。

『四人の男と住んでてキス以上が無しって信じられねぇ。普通はヤるだろ』
「律さんの普通はよくわかりませんけど、四人は家族……なんです」

自分の基準を他人に当て嵌めないでもらいたい。