【Quintet】

 スタジオを立ち去る晴を見送る悠真に新しい衣装に身を包んだ蓮が近付いてくる。

『晴どうした?』
『俺の代わりに沙羅を取り返しに行った』
『……ふーん。悠真は行かなくていいのか? 行きたそうな顔してるけど』

蓮には心の奥を隠していても見抜かれている。平静を装う悠真はミュージックビデオのプロットに目を通していた。

『俺はリーダーとしてMVの完成を見届ける義務がある』
『仕事人間だねぇ。内心は沙羅が心配でたまらないくせに』
『わかってるなら最速で最高の完成度を目指してくれ。このMVの世界を完璧に表現できるのは蓮しかいないんだ』

 20年来の友であり兄弟のような関係でもある蓮と悠真は、互いに最高を追い求めるプロ。
悠真の想いを汲んだ蓮は口元を上げ、ライトが灯るスタジオの中央に向かった。

        *

 京王井の頭線の神泉《しんせん》駅の側に建つホテルエイリアス。304号室は金屏風を彷彿とさせる壁面に、大きなベッドと赤いソファーのある豪奢な部屋だった。

『晴、今から来るよ』

 ベッドで寝そべる律の手にある物は沙羅の携帯電話。沙羅はベッド脇のソファーに縮こまって座っていた。

『晴が来るまで暇潰しに一回ヤっとく?』
「あの……何を……?」
『まさかここがナニする場所か知らないってことはないよな?』

ここがシティホテルやビジネスホテルとは趣《おもむき》が異なる場であることは理解している。20歳ともなればそれくらいの知識もあった。