【Quintet】

 コール音が途切れた時に聞こえた声は沙羅の声ではなく、どこかで聞いた男の声。

{久しぶりだな、晴}
『……律か?』
{アタリ。お前は昔から勘いいよな}

沙羅の携帯電話を使って晴と通話をする男の名は甲本律。晴が中学時代に親友と呼んでいた男だ。

『沙羅は?』
{沙羅ちゃんは俺と一緒にいる。無理やり連れ去ったわけじゃないぜ。本人同意の上だ}
『沙羅が同意してお前とラブホに行ったって言うのか?』
{ここに来て直接本人に聞いてみれば? 俺達まだここで“休憩”してるからさ。部屋は304だからな。間違えるなよ}

 切断された通話。真っ暗になった携帯画面に眉間にシワを寄せた自分の顔が映り込んでいる。

『……悠真。もしもの時が来たみたいだ。沙羅が律と一緒にいる。あの様子じゃ沙羅に何をするかわからねぇ。もう……何かされちまってるかもしれない』

項垂れる晴の肩に悠真の手が触れた。

『スタッフには晴は体調不良で帰ったってことにしておく。早く行け』
『悪いな。……沙羅は必ず連れて帰る』

 ここから代官山駅まで走れば5分。沙羅と律がいる円山町のホテルには20分もあれば着けるだろう。