【Quintet】

 知らない男だ。けれど知らないのに知っている。
キャップのツバを後ろに向けて被る男の顔に、晴の過去に登場したやんちゃな少年の面影が重なった。

「あなた……律……さん?」
『おお、俺のこと知ってるってことは、あの写真見てくれた?』
「……はい。……私に何かご用ですか?」
『そんな警戒しないでよ。あんたには何もしねぇよ。“今のところは”ね』

 スクランブル交差点の信号が青になり人々が動き出しても、沙羅と律は動かなかった。沙羅と律が立ち話をしていても誰も気にしない。

すぐ近くに交番はあるが警官にも通行人にも今の二人はありふれたナンパの光景としか思われないだろう。

『話があるんだ。ちょっと付き合ってくれない?』
「お話ならここで……」
『こんな道端だと誰に聞かれるかわからないよ? この写真ばらまいて写ってる人達がUN-SWAYEDでーすって今ここで大声で言ってもいいんだよ?』

律は沙羅に送った写真と同じ写真を持っていた。目の前にちらつくのは晴や悠真と写る被写体の自分。

UN-SWAYEDの正体を秘密にしているのは悠真達の考えあってのこと。彼らの友人の隼人や美月も迂闊に彼らの素性を口外していない。

 信号機が青から赤に変わった交差点。次に青に変わった時、ハチ公前広場には沙羅と律の姿はなかった。