【Quintet】

 それでも著名な両親を持つ沙羅には当たりが強い同級生は何人もいた。

「だから晴が羨ましくなっちゃった。由芽さんのことで晴が辛い想いをしたのはわかってるよ。でも律さんや由芽さんや悠真と写ってる写真の晴は凄くキラキラしてた」

今でこそ音大生なりの青春を謳歌していても晴のような恋と友情に揺れるキラキラした思春期の思い出を沙羅は持っていない。

「……晴、朝も無理して笑ってたよね」
『晴なりに沙羅に気を遣わせないようにしてたんだ。逆にそれに付き合わせて気を遣わせちまってごめんな』

 30分かけて池袋に到着した。明治通りを離れて大学をぐるりと囲む一方通行の道に入る。星夜は学校の建物を少し過ぎた先で車を停めた。

ここなら教師にも学生にも見られる心配はない。

「送ってくれてありがとね」
『本当は毎日でも送ってあげたいなぁ。ローテーションなのが悲しい』

 星夜の唇が沙羅の額に軽く触れる。抱き寄せられた沙羅は彼の腕の中で赤く染まった顔を上げた。

『さーらーちゃーん? おでこにチューじゃ物足りないって顔してる』
「そんな顔してないですっ!」
『嘘つけ。物欲しそうな目してる。海斗とのキスは忘れてそろそろ俺とのキスを思い出そうか』

 自然と目を閉じて受け入れていた星夜の唇。
海斗とのキスは息もできないくらいに荒々しくて、星夜とのキスは息をするのを忘れるくらいに酔わされる。

どちらのキスにも甘く狂わされて翻弄される。
いつからこんなにはしたない人間になってしまったの?