【Quintet】

 少しでも“普通”から外れた異端が排除される傾向はいつの時代も変わらない。

『沙羅も音楽家の親二人だと大変だったな。しかも葉山家のこともあるし』
「そうなの。葉山の家のことは同級生のお母さん達が噂してた。お祖父さんがお金持ちだから苦労もなく音楽させられるお金があるんだね、ピアノが上手いのも音楽家の親の遺伝だからだね、高い授業料の有名な先生に習っているからなんだね、って。……中学の同級生のお母さんに笑ってない笑顔で言われたのを覚えてる」

 子どもは真顔で悪口を吐き、大人は笑顔で悪口を囁く。

 沙羅がどれだけ毎日ピアノの練習をしているかなんて知らずに、親の遺伝だから、有名な講師に師事しているからと好き勝手に悪口を言われて悔しかった。

「小学校上がる前から13歳まではアメリカの学校にいたけど、アメリカの方が伸び伸びできたんだ。アメリカは他にも沢山の国の子がいて、音楽の世界に国境はないからアンサンブルを通して仲良くなれた。国籍は関係なかったの」
『その点だと日本はネチネチしてるよねぇ』

アメリカにいた沙羅とフランスにいた星夜。帰国子女の二人にしか共有できない感情だ。

「うん。14歳で日本に戻ってきて日本の中学校に通ってびっくりした。最初は転校生ってだけで近寄ってくるけど、お父さんを通じて芸能人の誰かと知り合いじゃないかって聞いてくる女の子が多くてね」
『うわっ。あわよくば芸能人とお知り合いになりたい作戦がミエミエ』
「だけど織江は違ったんだ。途中から吹奏楽部に入ってきた私を親のこと関係なく受け入れてくれたの。中学で本当に友達って呼べたのは織江だけだった」

 高校では織江の他にも友達ができた。私立の音楽科だから帰国子女も珍しくない。