【Quintet】

『晴が美月ちゃんを好きになるかもって思ってる?』
「うーん……。昔好きだった人にそっくりな人がいたら重ねちゃうんじゃないかなぁって」
『確かに美月ちゃんに由芽ちゃんを重ねて見てるとこはあるんじゃないかな。由芽ちゃんとはもう会えないからこそね。だけど俺から見れば、晴は美月ちゃんとはあくまでも友達の彼女として一線置いて接してるよ。晴にとって隼人は友達。隼人を裏切る真似はしないと思う』

 断言する星夜の言葉には晴への信頼が含まれていた。

「男の子の友達関係って羨ましいなぁ。私はそこまで仲良くなれる子が少なかったから……」
『沙羅の友達の話、美月ちゃん以外だと同じ大学の織江《おりえ》ちゃんだっけ。その子の話しか聞かないから気にはなってた』
「織江とは中学の吹奏楽部から一緒なんだ。私がピアノで織江がフルート。高校も二人して音楽科のある高校行って、大学も同じ。織江が一番、私の家の事情はわかってくれてるの」

中学の時に友達がいなかった沙羅が初めて友達と呼べた存在が織江だった。

「お父さんもお母さんも音楽の世界にいる人なら皆知ってる有名人だから、そのせいで悪口言われたりもしたんだ。お父さんとお母さんのことは大好きだけど普通の家の子に産まれたかったって中学の時は思ってた」
『子どもの時って少しでも誰かが決めた“普通”と違ってるだけで悪口言われるよな。俺も悪口はしょっちゅうだったよ』
「星夜も悪口言われたことあるの?」
『あるある。双子の純夜の瞳は黒なのに俺は母さんと同じこの色を受け継いじゃったからね。瞳の色が違うだけで異人異人って言われたよ。うっせーよってあえてのフランス語で言い返してたけどな』

 星夜のブルーグレーの瞳は日本の学校では目立つ。大人も子どもも“皆と同じ”が好きな生き物だ。
皆と同じを“普通”と呼び、皆と同じで安心する。