【Quintet】

 一通り話を聞き終えた沙羅が部屋を出ていった。
晴はアルバムの最後のページをめくる。由芽はインスタントカメラを持ち歩いていて、学校行事以外のほとんどの写真は由芽のカメラで撮られたものだ。

 律と由芽と三人で初めてプラネタリウムに行った14歳の冬。

大人になったら星が綺麗に見える場所までドライブして本物の星空を見ようと三人で約束したのに、約束は叶えられないまま由芽だけが空の星になった。

 やりきれない想いを抱えて晴は携帯電話の通話をある番号に繋げる。

『龍牙さん。夜分にすいません。……いえ、この前の件とは別件で相談があって……』

 これは償いという名の自己満足。誰かのためと言いながら人は結局自分のためにしか生きられない。


 ──“私は良い子じゃないんだ。良い子を演じているだけなんだよ。
二人に勉強を教えてるのも先生に頼まれたから。テストで良い点取るのも親がそうしなさいって言うから。
全部、大人に良い子だって思われたい私の自己満足の正義なんだよ”──


 優等生の良い子を演じていた由芽も抑圧された世界で生きる被害者だった。だけど由芽の自己満足の正義に晴と律が救われたのは事実だ。
大人が信じられなかった思春期のあの頃、信じられる確かなモノを由芽が与えてくれた。

星空が好きな由芽は腐った世界で晴と律が見つけた、たったひとつの太陽だった。



(※ 晴、悠真、隼人の高校時代と晴が所属していた黒龍に関しての物語は【白昼夢スピンオフ】に掲載しています)