【Quintet】

 星夜が作ってくれたシナモンパウダー入りのホットミルクを飲むと気分が落ち着いてきた。自分が盗撮された写真をまじまじと見つめた沙羅は、あることに気付く。

「私がひとりで写ってる写真も皆と同居してからの写真なんだよね。髪を染めたのが3月の終わりなの。1年の時はずっと黒髪でもう少し長かったんだ」

写真に写る沙羅の髪色は黒ではなく暗めのモカグレージュで長さはセミロング。着ている服も4月以降の物。

『ストーカー野郎は4月になってから沙羅の盗撮始めたってこと?』
「ううん。4月じゃない。全部5月の写真だよ。ほら、この写真には悠真と晴に誕生日プレゼントで貰った腕時計とバッグが写ってる。海斗と星夜と夜にコンビニに行ったのはゴールデンウィークが明けてすぐだったよ」

写真はすべて5月のゴールデンウィーク以降に隠し撮りされたものだ。

『たった3週間でよくここまで撮るねぇ。ふーん。俺様の写真写りはまぁまぁじゃん?』
『お前なぁ、呑気に写真写り気にしてんじゃねぇ。沙羅が変態野郎に盗撮されたんだぞ』
『俺だって腹の中はふつふつぐつぐつ煮えたぎってますよー? これで沙羅のスカートの中を盗撮した日には犯人の命はないね』
『笑顔で言うな。星夜がキレると洒落になんねぇよ』

 海斗と星夜が盗撮犯の正体に推理談義を重ねる最中、沙羅は沈黙を続ける晴が気がかりだった。

「晴、大丈夫? 顔色悪いよ」
『……ああ。ごめん、平気。こんなの撮られた沙羅が一番怖いよな。俺達がついてるから大丈夫だよ』

そう言う晴が一番大丈夫ではなさそうだ。交通事故でこの世を去った同級生の由芽と晴には、何か因縁があるのかもしれない。