【Quintet】

『海斗との散歩は楽しかった?』
「楽しかったよ……?」
『楽しかったんだ。それは良かったな』

月明かりに照らされた隼人の顔がぐっと近付く。この顔は拗ねている時の顔だ。

「まさかとは思うけど海斗くんとお散歩したの、ヤキモチ妬いてる?」
『別にー?』
「おもいっきり妬いてるじゃん!」
『じゃあ美月は俺が沙羅ちゃんと散歩しても妬かないのかよ?』

問われた美月はきょとんとした後に笑い出した。

「沙羅ちゃんとのお散歩にはヤキモチ妬かなかったよ。ゲームだってわかってるしね。これが全然知らない女の子だったら嫌かも」
『俺は知ってる男でもゲームでも、男と美月を二人きりで夜道歩かせるのは嫌だったんだからな』
「ふふっ。隼人可愛い」
『こら。そんなこと言う悪い子にはお仕置きだ』

 笑う美月の唇は隼人の唇に塞がれた。アルコールと汗と煙の匂いに包まれる夜は初夏のプロローグ。

隼人が口に含んだビールが口移しで美月の口内に流し込まれた。ゴクリと喉を鳴らした美月の口にまた隼人から口移しでビールが注がれる。

「んっ……。酔っちゃうよ」
『酔う手前まで』
「せっかくなら桃味かカルピス味のチューハイが良かったなぁ。ビール苦いもん」
『また今度な』

こうして隼人とアルコールの口移しをするのは初めてではない。来週のハタチの誕生日までは飲酒を解禁にしない沙羅の純情さに比べたら自分はもう純情ではないのかもしれない。

 ビール味のキスを繰り返す美月は隼人の腕の中で甘く甘く、愛にとけていた。