【Quintet】

 美月の花火も消えていて、二人の周りに闇が落ちている。

「新しい花火貰ってくるね。次は何がいい?」
「なんでもいいよ。でもあんまり火が怖くなさそうなので……」
「あははっ。わかったよー」

 美月を見送る沙羅の心はモヤモヤの嵐。そんな沙羅の心境を感じ取っていた美月は足を止めて振り返った。

 河原にしゃがむ沙羅の視線の先には花火に夢中になる海斗がいる。さらに周りを見渡すと、海斗と花火で遊びながらも沙羅を気にしている星夜、岩場に座ってビールを飲む悠真も沙羅を見つめていた。

四角関係の現場を目撃してしまった。これは一大事だ。

『そんな難しい顔して突っ立って、何してるんだ?』

 缶ビール片手の隼人が唸る美月の横に並ぶ。美月は悠真達を指差して隼人に耳打ちした。

「隼人は誰を応援する?」
『全員応援はしてるよ。強いて言うなら長年の友達贔屓で悠真だな』
「でも悠真くんはまだ本格的には動いていないみたいだよ」
『ラスボスは最後に現れるってこと。腹黒悠真らしいやり方だよ。……だけど美月。人の心配より自分の心配した方がいいぞ』

 妖しい笑いを浮かべた隼人に手を引かれた美月は皆がいる河原から隠れるように大きな岩場の裏に連れ込まれた。