【Quintet】

 美月の綺麗な瞳の前では本心を隠して取り繕っても心を見透かされそうで、心を隠したい彼は居心地が悪かった。だけどいつからか、美月の真っ直ぐな瞳を受け入れていた。

『美月ちゃんの名前、美しい月って文字も響きも綺麗だよね』
「私はブルームーンの夜に生まれたの」
『二回目の満月の?』
「ふふっ。やっぱり詞を書く人はそういう事に詳しいね。私が生まれた夜の満月が凄く綺麗だったんだって。だから美月《みつき》って名付けられたの」

 風の音がして美月の髪がなびいた。星空のキャンバスの中心には美月と同じ、優しい光を放つお月様。

 丸太の階段を上がって経路を進む。暗がりの道に二人の足音が響いた。

『沙羅、俺のこと何か言ってた?』
「キスしちゃったんでしょ?」

いきなり急所を狙われたダメージは大きい。暗闇で見えないのに赤面する顔を美月からそらして海斗は咳払いした。

「女はね、ちゃんと言葉で表してくれないと戸惑っちゃうよ。好きなら好きって言葉にしないと伝わらないよ」
『そういうものか……』
「そういうものです。特に沙羅ちゃんは恋愛に慣れてないからね。強引過ぎるのもダメ。優しくね?」
『うわっ。それ俺には一番の無理難題だよ』

 嘆く海斗と笑う美月。ペアが沙羅じゃなくてガッカリしたけれどたまにはこんな意外なカップリングも悪くない。
森を抜けた先にコテージのオレンジ色の灯りが見えた。