【Quintet】

 でも二人の恋物語には楽しいだけじゃない、辛く悲しい記憶が存在するのかもしれない。

『沙羅ちゃんは海斗のことどう思ってる?』
「えっ……なんで海斗っ?」
『今日の二人見ててなんとなく感じたのは、沙羅ちゃんは海斗を避けてるよね?』

 美月だけではなく隼人にも気付かれていた。このカップルの洞察力は鋭い。

『沙羅ちゃんは海斗を避けてるし、海斗は沙羅ちゃんにやたら構うし、二人見てると飽きなくて面白いよ』
「美月ちゃんにも同じ事言われちゃったよー。海斗にキスされて、それでちょっと気まずいって言うか……」

羞恥心で沙羅の声はだんだん小さくなっていく。隼人は笑った。

『海斗も攻めるなぁ』
「男の人って好きでもない子とキスできちゃうの?」
『答えにくい質問だね。今更隠すことでもないから正直に言うと、俺は美月と付き合う前までは愛情のない女ともキスはしてた。男は愛情と性欲処理が別な時があってね、気持ちがなくてもキスができる奴はできるんだよ』
「男の人ってそうなんだね……」

 では海斗は? 海斗との二度のキスも性欲の発散目的?

『でも俺は今は美月以外とのキスは考えられない。好きじゃないとキスできないよ。海斗だってそうかもしれない。悠真も星夜も晴も、沙羅ちゃんを大事にしてる。これは間違いない』

 美月が隼人に救われたと語った意味がわかる。隼人はとても温かい人だ。
晴や星夜と悪ふざけをしている時もあれば、的確な助言をしてくれる頼もしさ、温かい人柄。

こんなに優しくて素敵な彼氏と出逢えた美月が沙羅は羨ましくなった。