あれから駅まで行って2駅電車に乗った。
暁斗くんが電車に乗ってるのが意外過ぎて
「暁斗くん、電車乗れるんだ」
本音がポロッと口から出てしまった。
「人生で2回目。飯田に教えてもらった」
少し顔を赤くしながら話す暁斗くんが可愛過ぎて、私は笑ってしまった。
「なに笑ってんだよ」
むにっと私のほっぺをつねる手。
全然痛くない。
優しい温かな手。
なんだかこれって…
「ここは…」
連れてきてもらったのは水族館。
え、なぜ水族館?
「入るぞ」
スタスタと入り口を目指していく暁斗くん。
「ちょっと暁斗くん!入場券買わなきゃ入れないから!」
「入場券?」
もしかして暁斗くん…
「高校生2枚お願いします」
入場券売り場で私が言うと
「これで。お釣りはいいです」
1万円を出してそのまま入場口へ向かおうとする暁斗くん。
「待て待てーいっ!!!!」
高校生料金1人500円だよ!?
お釣りいらないってなに!?
係のお姉さんもちょっと引いてるじゃん!
私がお釣りを預かり、急いで暁斗くんの所へ行く。
「暁斗くん。ちゃんとお釣りもらって」
「小銭だろ?ならいいと思って」
こ、、ぜに??
水族館の入場料、いくらだと思ってんの…?
「暁斗くん、水族館初めて?」
「は!?なら悪いかよ!」
やっぱり!!
それにしても、金銭感覚が怖いけど。
「ううん、なんか嬉しいなと思って」
「なにが」
「暁斗くんの“初めて”を一緒に過ごせるのが嬉しくて。前の100均やゲーセンとかもね」
ほんとに嬉しい。
「じゃあいおの“初めて”も、もっと教えてよ?」
優しく笑ってそんなことを言うから、心臓がドキドキうるさくなる。
「な!!私はいっぱいあるよ!!ダンスパーティーとかドレス着たこととかゲーセンとか!!あんな大きな家に住んでることも!」
くしゃ
頭を撫でられた。
「なら、もっと増やすぞ」
その笑顔に胸がきゅんとしてしまう。
なぜそんなにも、甘々モードなんだ。
水族館の中を2人で一緒にゆっくりと周る。
手を繋いで。
さっき暁斗くんと会うまでのウジウジした自分が嘘のように、笑顔になってる。
暁斗くんのおかげ。
私は暁斗くんを笑顔に出来てるかな?
「いお?」
私がジッと見ていたからだ。
「あっ!なんでもないよ!イルカショー行かない?」
この水族館はお父さんがいた頃、一度家族で来たことがあったなぁ。
私が小6で晴がまだ4歳ぐらいだったかな?
「おぉー!すげー」
イルカショーを見て、暁斗くんが珍しく興奮してる。
嬉しい。
最後のパフォーマンスが始まった。
大きな水飛沫が上がり、こっちにやってくる。
濡れちゃう!!
バシャッ!!
お互い庇い合ったせいで、結局お互いずぶ濡れに。
「あはははは!!」
それがなんだかおかしくて、楽しくて私は大笑い。
「バカいお」
そう言って暁斗くんは私に軽くキスをした。
「おぉ〜」
「ヒュ〜」
周りからの声に恥ずかしくなる。
「わわわ!みんなの前だから!何すんの!」
「別にいいだろ。俺がしたくなったんだから」
うん。
もうね、憧れるぐらいの清々しさ。
潔さ。
暁斗くんはかっこよくて絵になるけど、相手の私が見れたもんじゃないんだからー!!!
「これで拭いとけ」
売店でタオルを買ってくれた。
「ありがとう」
制服での水族館デートが終わっちゃう。



