よし!

夜、少し暁斗くんに時間を作ってもらおう。
ちゃんと素直な気持ちを話すんだ。


釣り合わなくても…隣にいさせて欲しい。




ん?

校門付近がなんだか騒がしい。

私は人混みをかき分けて帰宅に急ぐ。




「おい」


この声はー…


「えっ!暁斗くん!?」


「また無視か」


「ち、違うよ!気づかなかっただけだよ!」


さすがというか…他校でも人気の暁斗くん。
“皆実暁斗”として知っている人たちが多いけど、かっこよくてファン的になってる子たちもいるらしい。


それにしても、暁斗くんの周りに女の子たちが多くてなかなか近づかない。




「邪魔」


そう言って周りの女の子たちを退ける暁斗くん。
あぁ、塩モードだ。



グイッ

私は肩を抱かれて暁斗くんの方へ倒れそうになった。



「やっとちゃんと喋ったな」

「前から無視はしてないし…!」



なんで暁斗くんがここにいるの!?



「ついて来い」

「わっ!」



手を引っ張られて、強制的に手を繋ぐ状態に。
でも、それが実はすごく嬉しくて離さないでほしいって思ってしまう。




でもね


もう10分ぐらい経ったかな?
手は繋いだままです。



会話はゼロです。

初対面でも、もうちょっと話すやろ!?って思ってしまうぐらいに。



「あの…どこ行くの?仕事あるんですが」

「休み」

「えぇ!?それなら先に言ってください!牧さんたちにもちゃんと自分から言いたいし、休み前には他の方に負担にならないように仕事をやっておきたいんです」


私だけこんな自由なシフトはおかしい。
仕事なんだから。
ちゃんとしたい。



「あの家では俺の言うことが絶対だ」


わぁー。
清々しいほどの俺様爆発。


「そういう問題じゃないから!」

手を振り払い、私はその場に立ち止まった。




「言ったら来なかっただろ」

「え?」

「事前に言ってたら、お前は今日絶対ついてこなかったはずだ。牧さんたちにはちゃんと言ってる」


あ…このためにだったんだ…


私ってばまた勝手に怒ってる…


「暁斗くん、ごめ…」
「行くぞ」


また繋がれた手。


あーあ、私はダメだ。
俺様は暁斗くんだけど、自己中は私だ。