「暁斗様、もらってください」
「いらない」
このやり取りを数十回…いやもっとか?毎年してるのに、懲りずに持ってくる。
だいたいなんで学校で【様】がいるんだよ。
その時点で昔から吐き気がしてた。
どうせ家柄でしか俺を見ていないということ。
まぁ、それもいい。
どうでもよかったから。
でも、いおは違った。
初めて会った俺に怒ったり、【暁斗くん】と呼んでくれたり、俺を【俺】として見てくれた。
その時から俺はすでにいおが気になっていたのかもしれない。
毎年学校や仕事関係などの女性たちから大量にもらうチョコ。
仕事関係はいいとして、学校の女子たちはなんでこうも毎年。。。
思いっきり断ってるのに。
でも今年は一味違った。
「皆実、やるよ」
「…は?なにいきなり」
「だっだから!チョコだよ!」
佐伯から14日にチョコをもらった。
なんで佐伯が俺…にチョコ……?
もらって余ってるとかか?
んー、よくわからないけど
「おう。サンキュ」
もらっといた。
なぜか佐伯が顔を赤くしてダッシュで走り去った。
余計意味がわからない。
14日の夜。
晩飯も終了。
いおの仕事も終了。
今のところ、安定のいつも通り。
別に期待してるわけじゃねぇけど…
お風呂上がりのいおと廊下で会った。
「あっ暁斗くん!」
「おぉ…」
今か?
「おやすみ!」
「………………」
朝になにもない時点である程度わかってたつもりだし。
っていうか、別にバレンタインとかどうでもいいし。
一切気にしてないし。
—次の日の朝—
「朝飯足りない。もう一品作れ」
「はい…?もう十分あると思いますが…」
「ヨーグルトでいいから持ってこい」
うーわ。
朝から機嫌の悪さMAXの俺様キモ野郎に化してるよ。
チョコをもらえなかったショックを思いっきり引きずり八つ当たりをする暁斗と、理由を全くなにもわかってない伊織。
頑張れ!暁斗!



