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「いやだ」
「嫌とかじゃない。行くんだ」
「行く意味なくない?俺、中1から行ってないんだし」
4月の、とある日の夜ご飯中。
なかなかの険悪ムード。
優聖学園の中等部に中3から行くように暁斗くんが手続きをしてくれたらしい。
それに和希くんが反発。
「行かなきゃ意味がないんだ。行けば意味がある」
「なんかよくわかんないね、それ」
相変わらずのマイペースな和希くん。
私も一緒に夜ご飯を食べてるけど、関わらないよう空気になるよう努めている。
「じゃあさ!」
ガタッと席を立つ音が聞こえる。
そして黒っぽい影が私にどんどん近づいてくる。
ガシッ
あれ?なんか後ろから腕を回された。
「伊織と一緒なら行くよ」
あー、私を巻き込まないで…
「無理に決まってんだろ。いおは高1だし学校も違う」
「はいはい、わかってますよ〜」
わかってたんかい!
和希くんはほんと何考えてるのか予想がつかない。
「とりあえず俺行く気ないから」
そう言ってダイニングを出ていく和希くん。
「…チッ」
舌打ちの後はため息。
厚かましく出しゃばっちゃいけないってわかってるけど…
「こういう話って…親からするものなのかなって……」
言ってしまった。
暁斗くんはこっちをジッと見ている。
怒られるかもしれない…!!
でもね、暁斗くんに伝えたくて…
私は席を立ち、暁斗くんに近づく。
「厚かましくごめんなさい…うまく言えないけど、暁斗くんて和希くんにとってお兄さんだしお父さんでもあるんだなって思って…すごいよ、ほんとに」
だからこそ
「だからこそ…暁斗くんが責任を感じすぎたらダメだよ」
語彙力がないなぁ、私。
なんでもっとうまくいえないかなぁ。
「心配になる…」
結局厚かましく口を挟んでしまった。
暁斗くんの腕が伸びてきて、私の腰あたりに腕を回した。
暁斗くんは座ったまま何も言わず、私を抱き寄せた。
私は立ったまま、少しかがむように暁斗くんを抱きしめた。
和希くんが帰ってきてからの暁斗くんはずっとひとりで何かを抱えているようで、見ていてたまに心配になる。
「いお…」
少し弱々しく聞こえる声。
「はい?」
「ちょっと太った?」
・・・・
今、なんて言った?
仮にもこんな雰囲気のシーンで
え、コイツなんて言った?
むにっと私の脇腹を摘む暁斗くん。
「ん〜最近抱きしめてなかったからなぁ〜。柔らかく感じる」
そう言いながら、顔を見上げでイタズラに笑う暁斗くん。
「バッバカバカ!デリカシーないキモ野郎!嫌い!」
「あっそ。嫌いで結構」
なんかはぐらかされたようにも感じるけど…暁斗くんの笑顔が見れてひとまずホッとした。



