「飯田、俺はいおを守りたい」

「はい」

「力…貸してくれるか?」


「坊っちゃま、イエス以外にお返事があると思いますか?」




「くそオヤジにバレたらお前にも迷惑かかるかもしれない」


「坊っちゃまのお役に立てないことを超える迷惑など、この世にございません」


「バーカ」



坊っちゃま、あなたはご自分で気づいてらっしゃらないかもしれませんが
伊織様に出会ってから、笑うことが増えているんですよ。

私はその笑顔を守れるのなら、何だっていたします。



「明日の昼、金澤のところに行くことになった。飯田にも付いてきてもらうことになると思う」

「はい」

「でも…それじゃあいおをマンションまで連れていけねぇんだよな」


「伊織様におひとりで向かっていただくしか方法がございませんね」


だよな。。
まぁ、父さんたちをこの家からさえ出せば大丈夫だろ。


「明日、起きたらすぐいおに伝えるから」

「かしこまりました」



あのくそオヤジ…思い通りになんかさせねぇ。







「ん…」

あれ、なんかいつもよりあったかい。


うっすら目を開ける。
隣に誰かいる…?


あぁ、暁斗くんか。
綺麗な顔だなぁ。。



…って!!
ちがーーーう!!!


今の状況を認識した瞬間目が覚めて、飛び起きる。



隣には眠っている暁斗くん。


寝起きだというのに、この鼓動の速さ。

どういうこと!?
なんで暁斗くんが隣で寝てるの!?


まだ頭が追いつかない。

確か昨日暁おとが急に帰ってきて、それで暁斗くんの部屋に来て…

あ、私寝ちゃったんだ。



でっでも!隣で寝る…!?


改めてじっと見ると、ほんとに綺麗な顔。
寝顔もこんなに綺麗なんて…


私は静かに起き上がって、鏡で自分の顔を見る。

寝起きということも重なり、さらにひどくなってる顔に吐き気がした。
同じ人種なのか。。。




あ!朝ご飯作らなきゃ!
でも…暁おとに会うわけには…どうしよう。



「いお…?」

起こしちゃった!?


「ごめんなさい、起こしちゃいましたか?」


ゆっくり起き上がる暁斗くん。


「いや、普通に目が覚めた」


起きたてもかっこいいとか反則ですよ。



じっと私を見る暁斗くん。


ヤバイ、すごくドキドキする。




「……顔、むくんでるぞ」




しばきたい。
今すぐに。



「うるさいわ!!!」

「なにキレてんだよ」


やっぱ最低キモ野郎!!
数秒前のかっこいいは取り消し!!


キモ野郎はデリカシーもない、最低野郎でした。




「おわっ!もう7時半!!すみません、朝ご飯すぐ作ってきます!」



ガシッ

腕を掴まれた。



「いい。もう冬休みだし、もうちょっとゆっくりしろ」



最低キモ野郎なのに、くそぉ。
なんでいちいちときめいちゃうの、私。



「冬休みだからこそ、たくさん働かなきゃです」


「ほんと頑固…」


掴まれた腕を引っ張られて、ベッドにダイブ。



「父さんもいるし、しばらくここでじっとしてろ」


綺麗な顔にこんな至近距離で見つめられるなんてこと、人生であるかな!?


顔洗いたいー!

絶対目ヤニとかついてるもん
寝癖もエグイもん
歯磨きもしたいもん


ベッドでふたりきりなんて……



「俺は仕事あるから」

「ふぇ!?」


「牧さん来るまでここで大人しくしてろよ。絶対に」

私のドキドキはよそに、暁斗くんは起き上がり部屋を出ていった。



うわー…なんかわかんないけど、ひとりで盛り上がってた私…むっちゃ恥ずかしい。