ほぼ誘拐に近い勢いで車に乗せられた。


「あの!どこ行くんですか!?」

「俺の学校」

「はぁ!?」


まじで、意味がわからないんだけど!!




しばらくして着いたのは、私の通っている高校なんて比べ物にならないぐらい、門構えが大きい学校。


ここが、優聖学園…


「来い」


なんでいちいち命令口調やねん!
イライラするー!




校舎の中もとても綺麗で、悔しいけどちょっぴり憧れてしまう。



「おい、こっち」


パッと繋がれた手。


ドキッ


え!なに、私!!
ドキッてなに!?




ガチャッ

「お待たせしました」


連れて来られたのは、キモ野郎の家並みに広い部屋。


そこにたくさんいる生徒。




「もうっ!!暁斗ったら遅いんだから!!」


ん?
誰??


一際目立っている男性が1人



「あら、この子かしら?暁斗が言っていたお嬢さんは」


「はい、そうです」


男性の…はず……


「暁斗の好みって平凡な子なのね」


うわ、初対面でものすごく失礼



「これからよろしくね♪ダンス講師のヒロキよ」


あ、オネエさんだ。




私が固まっていると

「おい、自己紹介ぐらいしろ」


いや、パニックやっちゅうねん
いきなりこんな所連れてこられて


「あの…阿部伊織です」


何が起こっているのか、まだ全然わかっていない。



「あらー、伊織って可愛らしいお名前ね♪」


名前を褒めてもらえて、なんだか嬉しい。





「ちょっと先生」

女子生徒が挙手をした。


「何かしら、優子」

「他校からペアを連れてくるのはルール違反ではないでしょうか?我が校の伝統にも関わります」


「そうです!そもそも皆実様のお相手は優子様で決まっていたじゃないですか」


「ん〜、そうねぇ。でも、他校から連れてくるのはルール違反でもなんでもないのよ。何十年か前も、他校からペアを連れてきた生徒がいたわ」


ヒロキさん、あなたおいくつですか!?


「でも…!」
「優子様に失礼です!それにこんな凡人が皆実様の相手だなんて!」
「優子様の代わりなんて失礼にもほどがあります!」



いきなり連れてこられて、ディスられまくってる私。

なんで、そんなに言われなきゃいけないのよ。
どうせ私は平凡ですよ。
顔なんて普通以下ですよ。

だけどさぁ


「あの…なんでそんなこと言われ…んが!」

後ろから腕を回され、口を塞がれた。


なんとか後ろに顔を向けると、キモ野郎が。


ドキドキッ



「先生が良いって仰っていますし、問題ないのでは?そもそも僕は金澤さんとペアを決めた覚えはありません」


え…コイツってこんな風に喋れるんだ。



「でも!暁斗さんとその子は不釣り合いだわ!」


「そんなのお前に関係ないだろ?それに…これ以上コイツのことなんか言うと許さねぇよ?」


私のこと。。。
庇ってくれてるの?

いや!
そもそも、コイツのせいでこんな目に遭ってるんだった!




ところで、、、キモ野郎はやっぱり多重人格だ!


「暁斗、言葉遣いが悪いわよ。今は神聖なダンスの時間よ」

「申し訳ありません」



パンパンッ

ヒロキ先生が手を叩いた。



「はい、議論はここまで!何もルール違反していないので、暁斗のペアは伊織で決定ね!みんなは決まったかしら?」



えぇ〜〜!!
私の意見は無視ですか!?


私はキッとキモ野郎を睨む。


「なに?」

涼しげな顔で私を見下すように見る。



「私、ペア!?とやらをやるなんて言ってないですよ!そもそも、なんでここに連れてこられたのかわからない!」


「お前は俺のペアなの。文句は言わせねぇ」


わぁー
清々しいほどの俺様炸裂ダァ



「伊織。あなたもこれに着替えて」

ヒロキ先生に渡されたのは、スラっとしたワンピース。

女子生徒はみんなこれを着ている。


「とっとと着替えてこい」



私…今絶対この地域で1番可哀想だ。