とうとうやってきた9月30日。

日曜日で助かった。
しかも暁斗くんは仕事だし。


朝ご飯を作り終えて片付けなどしてから、飯田さんと牧さんにご挨拶。


「伊織様…大変不躾な質問になるのですが、暁斗坊っちゃまと別れるような…」
「ありません!!」


飯田さんの質問に少し食い気味で否定した。


「暁斗くんの気持ちはわからないけど、私はこれからもずっと暁斗くんといたいんです。だから…こうするんです」


もう理由を言ってしまってるようなものだな。。



「大変失礼いたしました。そのお言葉を聞いて安心いたしました」


「ここには住まなくなりますが、これからも宜しくお願いいたします」


「「こちらこそです」」



暁斗くんは仕事部屋にいるようなので、そのうちに玄関に向かう。
荷物も少ないから、段ボール3個で済んでみっちゃんに手伝ってもらって昨日までに少しずつ運び出した。

我ながら完璧な計画じゃない?
なんて、自画自賛して現実逃避をする。



「伊織!どこ行くの〜?」

ドキーッ!

「和希くん、部屋で勉強じゃなかった?」

「疲れた〜」


まさか、このタイミングとは…


「出かけるんなら俺も行くー」

「お、お母さんたちの所に行くから和希くんは家にいてね」


じーっと私を見る和希くん。


「へぇ〜。そうなんだ」

なんだか含みを持った言い方。


「ねぇ伊織」

「ん?」

「嘘ついたら…俺怒るよ?」


ドクンッ

なんだか見透かされてるような気がして、少し怖くなった。


「なにそれ、意味わかんないよ」


「だよなー。まぁ、気をつけて行ってらっしゃい」

「うん、ありがとう。行ってきます」



和希くんに見送られながら皆実家を後にする。

暁斗くんに会わずに済んでよかった。

もし暁斗くんにさっきのように言われたら…言ってしまいそうだったから。


暁おとに早く言いたい。
ちゃんとバレずに家を出たことを。




「暁斗くん、行ってきます」

私はそう呟いて歩きだした。



暁斗くんが部屋の窓からこっちを見ていたとも知らずに。




ー前編 fin...ー

『大嫌いな王子様 後編』に続きます。