楽しかった夏休みもあっという間に終わり、気づけば2学期が始まった。
今日の仕事はお休みをもらってる。
お母さんや晴に会いに行くため。
もうすぐマンションに着くっていう所で、目の前に大きな黒い車が停まった。
「阿部伊織様ですね?」
な、なに!?
車の後部座席の窓が開く。
「久しぶりだね」
出たー!!!
ほんとにお久しぶりの暁おとではないか!!
「お、お久しぶりです…」
「少しいいかな?」
もちろん断れるわけはなく、半強制的に車に乗せられる。
「なにか…ございましたでしょうか?」
緊張がすごい。
手汗も出てくる。
「暁斗はどうやら…きみに本気のようだね」
…それにどう答えたらいいの。。
「暁斗はね優秀で努力家で…我が皆実グループの今後を担っていく存在なんだよ」
はい、重々承知しております。。
「結婚相手なども大切でね…」
きた!
私はぎゅっと手を握りしめる。
「きみは暁斗との将来を考えているのか?」
まさかの質問に目がパチクリとなる。
「えっとそれは…どういう…」
「即答出来ないということは、暁斗との関係は真剣ではないということだね」
なんでそうなる!!
「真剣です!!大好きです!!これからもずっと一緒にいたいです!!」
我ながら…恥ずかしい言葉を大声で、、しかも暁おとに言ってしまった。
「そうか…ところで、ウチを出ていくことはどうなっている?」
そ、そうだよね。。
「申し訳ありません。至急で家を探して出て行きます」
沈黙がしばらく続く。
「暁斗とのことだが…私はやはり反対だ」
ドクンッ
わ。心臓が痛くなった。
「それでも暁斗といたいと言うなら、きみの本気を見せたまえ」
「本気…?」
—————————————
「いお、晴たちとゆっくり過ごせたか?」
「う、うん!遊んだりできたよ。ありがとう」
お風呂から上がって部屋に戻ろうとしたら、暁斗くんに会った。
心臓がドクドクする。
私、ちゃんと普通に話せてるよね?
「…なんかあった?」
ドキーッ!
「なにも!」
「ふーん…」
「じゃ…おやすみ」
ドンッ!
わぁ〜壁ドンだぁ♡
…って思ってる場合じゃない!!
「なんかあったな。正直に言え。でないと、ここで襲うぞ」
この人はほんとにしそうだから怖い。
てか、なんでわかるのー!!
なんか…
なんかいい理由(うそ)を…!!
考えろ、私!!
「えっと…」
「あと5秒」
ひえー!!!!
「4、3、2…」
「わ…私の誕生日って…覚えてる!?」
「…は?」
わー。。よりにもよってなんちゅーことを。。
自分から言うとか、図々し過ぎない?
てか、引くよね。
でも、他に思い浮かばなかったんだもん。
「覚えてるよ。10月2日だろ?」
覚えてくれてた…
やば…すごく嬉しい。
「そんなこと気にしてたんか?」
「う…うん」
正直に言うと全然気にしてなかった。
でも、覚えてくれてたことを知れて嬉しい。
鼻をむにっと摘まれた。
「んぎゃっ」
「あはは!なに変な声出してんだよ」
暁斗くんの笑顔に胸がぎゅーってなる。
「せっかくサプライズ考えてたのにさ。いおのせいで台無し」
私はこの人とこれからも一緒にいたい。
この笑顔をそばで見ていたい。
「暁斗くん、大好き」
伝えたくて仕方がなくなった。
「どうした?急に」
「言いたくなったから」
「…変ないお」
そう言って暁斗くんはキスをしてくれた。
絶対、暁おとに勝ってやる。
受けて立ってやるんだから。



