あれからみっちゃんに伝えるとすごく喜んでくれて、色々相談して浴衣で行くことになった。
そして、花火大会当日。
部屋で浴衣と格闘中。
みっちゃんと買いに行った浴衣。
安くて可愛いものがあってよかったぁ。
ただ、、、
全然上手く着れない。
動画を何度も見直しながらチャレンジするけど、全然うまくいかない。
どうしよう。
待ち合わせ時間が迫ってくる。。
コンコンッ
誰??
「伊織さん、少しよろしいですか?」
牧さんだ。
「は、はい」
部屋に入ってきた牧さんは、私の惨状に目をパチクリさせている。
「浴衣を着られるのですか?」
「はい…でも全然上手くできなくて…」
牧さんは優しく微笑んで
「私にお任せください」
そう言って浴衣の着付けをしてくれた。
「わぁー!牧さん、神様です。ありがとうございます!!」
「大袈裟ですよ」
牧さんのおかげで無事浴衣を着ることができた。
「そういえば牧さんどうしてここに?」
浴衣に夢中で用を聞けてなかった!
「いえ、暁斗坊っちゃまが下でソワソワしてましたので…伊織さんのお迎えに来ただけでございます」
牧さんはクスクス笑っている。
「え!暁斗くんとは15:30に家を出ようって言ってたんですが」
もう待ってるの!?
まだ15時前だよ。
「それほど伊織さんとのデートを楽しみになさってるってことだと思いますよ」
牧さんの言葉にドキドキがうるさくなる。
早く暁斗くんに会いたい。
毎日一緒の家にいるのに、毎日会えるのに、、こんなに愛しくなるのはなんなんだろう。
「これは年寄りのひとり言だと思って聞き流してくださいね?暁斗坊っちゃまは昔からずっとお勉強や旦那様のお仕事を継ぐための勉強をなさっていてお友達と遊びに行ったりなどがなかったんです。いつの間にか、ご自分からそういうことを望まなくもなったように思います」
前に和希くんも言ってた。
「そんな暁斗坊っちゃまが伊織さんと出会ってから、ご自分の気持ちを表に出すようになり、そしてこのように出かけるようになり…そのようなお姿を拝見出来て毎日幸せなのです」
暁斗くん…
「そんな…でも、幸せは私もです。こんな私を受け入れてくれているこの家の皆さんに感謝してもしきれません」
「伊織さん、“こんな私”は言ってはダメです。ね?」
いつも優しい牧さん。
「はい…。ありがとうございます」
「お礼を言うのはこちらですよ。伊織さん、ありがとうございます。今日も坊っちゃまに幸せを注いであげてください」
幸せをもらってるのは私なんだけどな。
結局牧さんにヘアセットもしてもらい、15:20ぐらいに1階に向かった。
「浴衣…?」
「うん…。変かな?」
しばらく無言の暁斗くん。
え!?変!!??
髪もアップにしてもらった。
「暁斗坊っちゃま、気持ちはちゃんと言葉にしないといけませんよ?」
「牧さん、うるさいです」
「これはこれは失礼いたしました」
この俺様暁斗くんも、牧さんには敵わないみたいだもんね。
「可愛い……」
ぼそっとした小声だったけど、ちゃんと聞こえた。
嬉しくて顔が赤くなる。
暁斗くんを見ると、暁斗くんも顔が赤くなってた。
私は暁斗くんに触れたくて、近づいて手を伸ばす。
「いつまでそんなバカップルしてんの?」
いきなり聞こえた声にハッとする。
「和希くん!」
「伊織可愛い〜!浴衣似合ってるね!」
和希くんがやってきて、現実に戻った。
私、さっき暁斗くんに触れてどうしようと思ってたの?
すごく…キスしたくなった。
そんな自分にびっくりしてしまう。
「なんで浴衣?」
「これから花火大会に行くの」
「え!俺、誘われてないよ!!」
「知らねーよ。行きたいなら勝手に行けよ」
「ごめんね和希くん。誘えてなかったね」
暁斗くんに誘ってもらったことわWデートに頭がいっぱいで、和希くんのことをすっかり忘れてしまっていた。
和希くん、ほんとにごめん!



