キーンコーン…
「答案用紙、後ろから回収してー」
や、やっと終わった…
「期末やっと終わったね。どうだった?」
「鬼コーチのおかげでなんとか…そこそこ出来たと思います…」
私は達成感と疲れで意識が遠のく寸前。
「いいじゃん、御曹司くんとふたりっきりの勉強会を毎日なんて。憧れるわ。どうせ甘々なんでしょ?」
みっちゃん、それは大きな誤解…いや勘違いです。
「前も言ったけど…あの人のスパルタはえげつないんよ。キモ野郎がレベルMAXになるから」
甘々?
そんなもの、皆無。
というか、そんな次元の話ではない。
キスやハグなんて、あの体育祭の日以来してない。
(回想)
「テメェ、何度言ったらわかるんだ?ここはこっちの公式を使うんだよ」
「…出来た!」
「なにが出来ただ!間違ってんじゃねぇかよ」
「ここ全部正解するまで寝んなよ」
それってパワハラとかいうものじゃないですか!?
「暁斗くんが頭良すぎなんだよ〜!」
「お前ほんとに奨学金貰えてんのか!?信じらんねぇ」
(回想終了)
ほんとはまだまだいっぱいあるけど、思い出したらキリがない。
「さすが御曹司くんだね。御曹司くんだって期末だったんじゃないの?」
「うん。暁斗くんたちは昨日終わってた」
なのに、私の勉強に付き合ってくれてたんだよね。
「やっぱり優しいよね…」
「十分優しいでしょ。ちゃんとお礼しなね?」
お礼…
「みっちゃん!!来週の木曜日、暁斗くんのお誕生日なの!」
「そうなの?試験休み期間だし、遊びに行けんじゃないの?優聖は試験休みとかあんの?」
「うん。今日から休みで来週の金曜日が終業式みたい」
「ラッキーじゃん。お祝いどうすんの?」
「えっと…デートに誘っていいと思う?」
実は私からデートに誘うのは初めて。
今までのお出かけも、【デート】と考えていいのかわからない所もあるけど、暁斗くんが全部誘ってくれた。
「伊織、変わったね」
「え?」
「自分から誘ったりを考えたりとかさ。御曹司くん、絶対喜ぶよ。ちゃんと誘いなよ?」
うるっ…
みっちゃんの言葉に涙が出てくる。
「みっちゃーん!!!」
私はみっちゃんに抱きついた。
「はいはい」
私のお姉ちゃんみたいな存在。
みっちゃんにデートのオススメスポットをたくさん聞いて勉強。
そして夜。
仕事も終わり、お風呂も入り終わった22時過ぎ。
コンコンッ
「はい?」
「暁斗くん、入っていい?」
ガチャッ
「どうした?もう試験終わったろ?」
いえ、勉強のために部屋に来たのではありません。
「暁斗くん!!」
「は!?なに?」
いきなりの私の大声に驚いている様子。
「ら…来週の木曜日って学校お休みだよね?その…予定空いてる?」
「来週の木曜?」
手帳を確認する暁斗くん。
「仕事だけど。どうした?」
ガーーーーンッ!!!
そうだ!!仕事あるの忘れてた!!!!
え、待って!
私もやん!!
ヤバイヤバイ、暁斗くんのお誕生日って浮かれてお休みお願いするの忘れてたし、そもそも暁斗くんの仕事の都合考えてなかったし!!
私はその場でうなだれた。
「なんなん…いったい」
私の意味不明な行動にちょっと引いてる様子。
「なんにも…ありません」
私は部屋を出ようとドアノブに手をかけた。
バンッ
後ろからドアを手で押さえられた。
「なんかあるんだろ?ちゃんと言え」
お誕生日とは…なるべく言いたくない。
当日だしバレるだろうけど、なるべくサプライズで…
でも仕事に迷惑かけたくないし。。
「いお?マジどうした?」
私はゆっくりと振り返る。
「1日仕事?夕方からとかでも…もし空いてたらどこか…出かけませんか?」
謎の敬語。
「そ…その場合大変申し訳ないのですが…私も早上がりをさせていただけたら……別日にしっかり残業します!!こんなワガママほんとにごめんなさい!!」
しーーーん
しばらく続く沈黙。
や、やっぱダメだよね。。
仕事にこんな私情も混ぜちゃってるし。
「ごめんなさい。やっぱり大丈夫です。失礼します」
私はもう一度ドアの方へ向く。
「その日、午前中で終わらせる。お前も午前中で上がれ」
え?
「いい…んですか?」
「その日、大した仕事ねぇし余裕。牧さんに言っておくからお前もちゃんと上がれよ」
ぱぁぁぁっ!!
私の心が晴れていく効果音が自分の頭の中で鳴る。
「はい!!ありがとうございます!!」
ヤバイヤバイ!!
嬉し過ぎる!!!
「では!」
「もう行くのかよ」
私はウキウキで部屋のドアを開ける。
「暁斗くん!木曜日、オシャレしてね!……デートだからね!!」
私絶対顔赤い。
デートって言葉を使うだけで、こんなにもドキドキしてしまう。
顔が赤くなってるのをバレないようにする為、私はそそくさと暁斗くんの部屋を後にした。
「…デートか……」
いおが急いで部屋を出てくれて助かった。
俺…絶対嬉しいのが顔に出てる。
あのバカ…



