競技場に設けられた客席の中段に、大きなガゼボのような建物が設えられている。
「陛下、ジョルジュ神官長が参りました。」
「通せ。」
「はい。」
レオナール王の侍従長アルチュールが短い返事をした。くすんだ薄い赤紫色の装束を着た温厚な性格が外見に反映されていそうな四十代半ばくらいの男性が姿を見せる。
「ジョルジュ、お久しぶりね。」
「両陛下におかれましては、」
「そのようなかしこまった挨拶はよい。」
平民が王族に対して行う礼の姿勢で挨拶をするジョルジュをレオナールが止めた。
「久し振りに会ったのだから、姿勢も戻してちょうだい。顔が見えないでしょう?」
「神官長という位を頂きましたが、平民であることは変わりありません。競技場は人目もございますので、この姿勢だけはご容赦下さいませ。」
「ここはガゼボになっていて回りからは見えにくいし、ここにいるのはリナやアナスタシア、警備の騎士も古参の者たちばかりなのだから今更でしょう?さぁ、姿勢を戻して、ジョルジュ。」
ジョルジュは、渋々と言った感じで立ち上がった。
「ジョルジュももちろん、リオの対戦は見たのでしょう?」
休憩に入る直前に行われていた第二戦は、騎士団 第一団隊第一中隊長 エリク・ボランと国軍特伐隊 第四隊長 リオ・マランの対戦だった。リオは、このジョルジュの息子である。
「はい。残念ながら負けてしまいましたが。」
「とても良い試合よ。まさしく惜敗。あともう少しだったのに。あんなに立派になって、マーガレットとあなたの自慢の息子ね。」
「恐縮の至りでございます。」
「王妃も私も褒めていたと伝えておいてくれ。」
「身に余るお言葉を賜り恐縮に存じます。」
「ところで、昨晩報せのあった、神殿に身を置いているエヴァリストと言う男の事だが…」
「お話し中に大変申し訳ございません。」
アルチュールがそこに割って入ってきた。
「王妃陛下に、テレーザ殿下より先触れが。」
「今から?」
「お急ぎのご用件で、場所を移しお話したいことがあるそうでございます。エシタリシテソージャのマリーナ様とエパナスターシのユリアーナ殿下も同席するそうでございます。」
「何の用でしょう?陛下少し席を外しますが良いでしょうか?」
「あぁ。演習を観戦するのが好きなテレーザが急ぎでと言うのだ、何かあったのかもしれない。何にせよ、頼む。」
「はい。陛下。では、アナスタシア、王宮の客間にテレーザたちを案内するように手配してちょうだい。」
「かしこまりました。」
∴∵
先頭をテレーザ、その後ろにマリーナ、そしてユリアーナは一番後ろを重い足取りで付いて歩く。どうしてこの様になってしまったのかを繰り返し考えているが、わからない。
『血のつながらない親子でございますか…しかし、殿下をお産みあそばされたアリーチェ様を殺したのですよ?実の母の敵をそこまで信用なさって大丈夫なのですか?テレーザ殿下やフェルナン殿が王族ではなく臣籍に落ちることになったのも王妃の仕業だと聞いています。それをご存知でも同じ様に信用されるのですか?』
『…私の母が、陛下に殺された?』
テレーザ殿下はそう言うと、すぐに自分の侍女にリオ王妃への面会の先触れを出した。それからあれよあれよの間に共に王宮の廊下を歩く事態になってしまっていた。マリーナはこの状況をどのように思っているのか、落ち込んだりしている様子もなく、恐れている風でもない。どちらかと言えば楽しみにさえしている様にユリアーナの目には映っていた。
ここに来ることになってしまってすぐに、付き添ってくれていたジョゼに王妃陛下の元に向うとヴィレムへの報せは頼んだが、突然の事で彼の方も何故この様な状態に至ったのか気になっているだろう。
事の次第によってはエパナスターシ王国の者全てが国外追放。下手するとそれを理由に攻め入れられるなんて事にもなるかもしれない。先ほどの演習を見ていても思ったが、この国に我が国が攻め入れられた場合、我が国に勝ち目はないだろう。そして、エシタリシテソージャは自国の従属国が失われるのは避けたいと考えるだろう、そうすれば、エパナスターシの地はエシタリシテソージャとプリズマーティッシュの戦争の戦地となる。
どうする?どうすれば、この場を上手く収められるか…冷静に考えなくては。
「こちらでお待ち下さい。陛下はすぐにおいでになりますので。」
テレーザは、その案内に小さく一つ頷いた。
「父上はこちらにいらっしゃらないのかしら?」
「国王陛下は引き続き、演習をご覧になっておいでです。」
「そう…話しは早いほうが良いと思っていたけれど、どうせなら父上にも聞いて頂きたかったわ。」
「お呼び致しましょうか?」
「話しの次第によっては、にしましょう。優秀戦士へ褒賞授与のお役目もあるから、演習を抜けるわけにはいきませんもの。」
「はい。かしこまりました。」
侍従の言葉が先か、テレーザが腰掛けるのが先かの瞬間で座った。
「さぁ、ユリアーナ殿下もマリーナ様もお座りになって。」
そうユリアーナがテレーザに勧められた席は、明らかにリオ王妃が座るであろう席の目の前の席だった。感情を表に出さないように何事もないように笑顔でその席に座った。
「王妃陛下、ご到着でございます。」
現れたのは、青みがっかった薄ピンク色のゆったりとしたデイドレスを身に纏ったリオだった。
「テレーザ、どうしたのです?怖い顔をして。」
「お話したいことがあるのです。取りあえず、お座り下さい。そして、お人払いを。」
リオが席に座ると、お茶が運ばれ、ドア付近でリオの侍女アナスタシアとリナが控えた。次の瞬間、ユリアーナは耳に何とも形容しがたい不快感を覚えた。顔をしかめたユリアーナをリオは優しい表情で見ていた。
「いきなり、ごめんなさい。アルテナ公夫人とヴァセラン子爵令嬢には慣れない感覚だったでしょう。これは魔壁と言って、今はこのテーブルセット全体に目には見えない壁を張っています。これで、座っている私たち以外には話しは聞こえないし、魔壁の中にも入って来ることも出来ない。私の魔壁を破ることが出来るのは国王陛下のみですから私が解除するまで、あそこに立つ私の侍女たちにも入ることは出来ないし、話しを聞かれる事もありません。これでどう?テレーザ。」
リオは横に座るテレーザに視線を送る。
「ありがとうございます。陛下。」
「それで?貴女が大好きな演習をさて置いても私に話したかった事とは一体何かしら?」
テレーザは、用意された紅茶を一口飲んで、
「陛下が、母を殺したとはどう言う事なのですか?」
リオは、再びテレーザに一瞥をくれると、突然体を前のめりにして哄笑した。
∴∵
ヴィレムは、背に嫌な汗を感じながら、案内人の後ろを歩いていた。
小休憩の時に、マリーナからの誘いがあり、ユリアーナはお茶を飲みに行った。それから暫くして慌てた様子で付き添っていたジョゼが戻って来た。何故か、王宮に戻り、リオ王妃と懇談する事になったという。詳細を聞こうとしたとき、次はヴィレムがレオナールから呼び出されてしまった。
国同士の話しならば、マウリッツも呼ばれているはずだが、呼ばれたのは自分一人のようだった。演習の第三戦が開始したようで、声援が聞こえる。言葉が分からないために、戦っている騎士や兵士への声援だと分かっていても、何か自分が責め立てられているような感覚になっていく。
「こちらでございます。」
そう言って、入り口の前で止まった案内人は、中にいる人へ声をかける。
「エパナスターシ王国 アルテナ公爵ヴィレム殿下お越しでございます。」
「入って頂け。」
短い返事をして、案内人はヴィレムを中へ入るように促す。ヴィレムが中へ入ると、彼より少し背の高く、紫黒色の髪の男性が立っていた。
「私が、第七十四代国王、レオナール・エイクロンだ。観戦中にお呼びだてして申訳ない。」
「改めてご挨拶申し上げます。 エパナスターシ王国 ヴィレム・アルテナと申します。祖父、ヨハン王より、公爵位を賜っております。」
「さぁ、そこへ座ってくれ。」
そう言いながら、その向かいの席にレオナールも座った。コートでは、水の魔剣を操る兵士と風の魔剣を操る騎士とが熱戦を展開している。
言葉に従い、ヴィレムが椅子に腰掛けると、そこへ変った服装の男性が現れた。
「彼は、我が国の神殿に仕える神官長のジョルジュだ。」
「私は、ヴィレム・アルテナと申します。」
ジョルジュと紹介された男性は、片膝立ちで顔をずっと伏せている。これは、プリズマーティッシュにおいて平民が王族に対して行う挨拶の姿勢らしいことは外遊前に聞いていた。
「昨晩、ジャンから話があり、神殿に仕える神官の一人が貴方の幼なじみに似ているのだとか。」
その話しで、昨日ジャンから聞き出した名がジョルジュと言う神官長だった事をヴィレムは思い出した。
「はい。陛下へ何のお話しもせず、直接ジャン殿下へお話しをしてしまい申し訳ありませんでした。」
「いやいや、その事は良い。ただ、そのエヴァリストと言う神官のこと気に掛かっているだろうと思い、老婆心ながらこうしてエヴァリストの上司であるジョルジュと貴殿を呼んだのだが…。ジョルジュは平民だが、発言を了承して頂けるだろうか。」
「もちろんでございます。」
「ジョルジュ、面をあげよ。」
礼の姿勢から静かに立ち上がった男性は、短く名乗った後、
「本日の夜、ヴィレム殿下とお話しさせて頂きたいと、エヴァリストより申し出がありました。」
「夜ですか?」
「エヴァリストには家族がありまして、まず家族に今までの事を話したいと。その後、殿下も含めた皆さまと今後について話したいと申しておりました。」
「家族が…いるのですか。」
「詳しいことは本人より話しがあると思います。」
「分かりました。」
「それと、アルテナ公爵夫人がリオに呼ばれて王宮へ行っているそうだな。」
「はい。」
「何の用だと心配であろうが、案ずることはない。」
レオナール王は、ヴィレムの顔を一瞥し明るく笑った。
「そうは言っても無理であろうな。まぁ、貴殿は、こちらで観戦すると良い。」
「陛下、ジョルジュ神官長が参りました。」
「通せ。」
「はい。」
レオナール王の侍従長アルチュールが短い返事をした。くすんだ薄い赤紫色の装束を着た温厚な性格が外見に反映されていそうな四十代半ばくらいの男性が姿を見せる。
「ジョルジュ、お久しぶりね。」
「両陛下におかれましては、」
「そのようなかしこまった挨拶はよい。」
平民が王族に対して行う礼の姿勢で挨拶をするジョルジュをレオナールが止めた。
「久し振りに会ったのだから、姿勢も戻してちょうだい。顔が見えないでしょう?」
「神官長という位を頂きましたが、平民であることは変わりありません。競技場は人目もございますので、この姿勢だけはご容赦下さいませ。」
「ここはガゼボになっていて回りからは見えにくいし、ここにいるのはリナやアナスタシア、警備の騎士も古参の者たちばかりなのだから今更でしょう?さぁ、姿勢を戻して、ジョルジュ。」
ジョルジュは、渋々と言った感じで立ち上がった。
「ジョルジュももちろん、リオの対戦は見たのでしょう?」
休憩に入る直前に行われていた第二戦は、騎士団 第一団隊第一中隊長 エリク・ボランと国軍特伐隊 第四隊長 リオ・マランの対戦だった。リオは、このジョルジュの息子である。
「はい。残念ながら負けてしまいましたが。」
「とても良い試合よ。まさしく惜敗。あともう少しだったのに。あんなに立派になって、マーガレットとあなたの自慢の息子ね。」
「恐縮の至りでございます。」
「王妃も私も褒めていたと伝えておいてくれ。」
「身に余るお言葉を賜り恐縮に存じます。」
「ところで、昨晩報せのあった、神殿に身を置いているエヴァリストと言う男の事だが…」
「お話し中に大変申し訳ございません。」
アルチュールがそこに割って入ってきた。
「王妃陛下に、テレーザ殿下より先触れが。」
「今から?」
「お急ぎのご用件で、場所を移しお話したいことがあるそうでございます。エシタリシテソージャのマリーナ様とエパナスターシのユリアーナ殿下も同席するそうでございます。」
「何の用でしょう?陛下少し席を外しますが良いでしょうか?」
「あぁ。演習を観戦するのが好きなテレーザが急ぎでと言うのだ、何かあったのかもしれない。何にせよ、頼む。」
「はい。陛下。では、アナスタシア、王宮の客間にテレーザたちを案内するように手配してちょうだい。」
「かしこまりました。」
∴∵
先頭をテレーザ、その後ろにマリーナ、そしてユリアーナは一番後ろを重い足取りで付いて歩く。どうしてこの様になってしまったのかを繰り返し考えているが、わからない。
『血のつながらない親子でございますか…しかし、殿下をお産みあそばされたアリーチェ様を殺したのですよ?実の母の敵をそこまで信用なさって大丈夫なのですか?テレーザ殿下やフェルナン殿が王族ではなく臣籍に落ちることになったのも王妃の仕業だと聞いています。それをご存知でも同じ様に信用されるのですか?』
『…私の母が、陛下に殺された?』
テレーザ殿下はそう言うと、すぐに自分の侍女にリオ王妃への面会の先触れを出した。それからあれよあれよの間に共に王宮の廊下を歩く事態になってしまっていた。マリーナはこの状況をどのように思っているのか、落ち込んだりしている様子もなく、恐れている風でもない。どちらかと言えば楽しみにさえしている様にユリアーナの目には映っていた。
ここに来ることになってしまってすぐに、付き添ってくれていたジョゼに王妃陛下の元に向うとヴィレムへの報せは頼んだが、突然の事で彼の方も何故この様な状態に至ったのか気になっているだろう。
事の次第によってはエパナスターシ王国の者全てが国外追放。下手するとそれを理由に攻め入れられるなんて事にもなるかもしれない。先ほどの演習を見ていても思ったが、この国に我が国が攻め入れられた場合、我が国に勝ち目はないだろう。そして、エシタリシテソージャは自国の従属国が失われるのは避けたいと考えるだろう、そうすれば、エパナスターシの地はエシタリシテソージャとプリズマーティッシュの戦争の戦地となる。
どうする?どうすれば、この場を上手く収められるか…冷静に考えなくては。
「こちらでお待ち下さい。陛下はすぐにおいでになりますので。」
テレーザは、その案内に小さく一つ頷いた。
「父上はこちらにいらっしゃらないのかしら?」
「国王陛下は引き続き、演習をご覧になっておいでです。」
「そう…話しは早いほうが良いと思っていたけれど、どうせなら父上にも聞いて頂きたかったわ。」
「お呼び致しましょうか?」
「話しの次第によっては、にしましょう。優秀戦士へ褒賞授与のお役目もあるから、演習を抜けるわけにはいきませんもの。」
「はい。かしこまりました。」
侍従の言葉が先か、テレーザが腰掛けるのが先かの瞬間で座った。
「さぁ、ユリアーナ殿下もマリーナ様もお座りになって。」
そうユリアーナがテレーザに勧められた席は、明らかにリオ王妃が座るであろう席の目の前の席だった。感情を表に出さないように何事もないように笑顔でその席に座った。
「王妃陛下、ご到着でございます。」
現れたのは、青みがっかった薄ピンク色のゆったりとしたデイドレスを身に纏ったリオだった。
「テレーザ、どうしたのです?怖い顔をして。」
「お話したいことがあるのです。取りあえず、お座り下さい。そして、お人払いを。」
リオが席に座ると、お茶が運ばれ、ドア付近でリオの侍女アナスタシアとリナが控えた。次の瞬間、ユリアーナは耳に何とも形容しがたい不快感を覚えた。顔をしかめたユリアーナをリオは優しい表情で見ていた。
「いきなり、ごめんなさい。アルテナ公夫人とヴァセラン子爵令嬢には慣れない感覚だったでしょう。これは魔壁と言って、今はこのテーブルセット全体に目には見えない壁を張っています。これで、座っている私たち以外には話しは聞こえないし、魔壁の中にも入って来ることも出来ない。私の魔壁を破ることが出来るのは国王陛下のみですから私が解除するまで、あそこに立つ私の侍女たちにも入ることは出来ないし、話しを聞かれる事もありません。これでどう?テレーザ。」
リオは横に座るテレーザに視線を送る。
「ありがとうございます。陛下。」
「それで?貴女が大好きな演習をさて置いても私に話したかった事とは一体何かしら?」
テレーザは、用意された紅茶を一口飲んで、
「陛下が、母を殺したとはどう言う事なのですか?」
リオは、再びテレーザに一瞥をくれると、突然体を前のめりにして哄笑した。
∴∵
ヴィレムは、背に嫌な汗を感じながら、案内人の後ろを歩いていた。
小休憩の時に、マリーナからの誘いがあり、ユリアーナはお茶を飲みに行った。それから暫くして慌てた様子で付き添っていたジョゼが戻って来た。何故か、王宮に戻り、リオ王妃と懇談する事になったという。詳細を聞こうとしたとき、次はヴィレムがレオナールから呼び出されてしまった。
国同士の話しならば、マウリッツも呼ばれているはずだが、呼ばれたのは自分一人のようだった。演習の第三戦が開始したようで、声援が聞こえる。言葉が分からないために、戦っている騎士や兵士への声援だと分かっていても、何か自分が責め立てられているような感覚になっていく。
「こちらでございます。」
そう言って、入り口の前で止まった案内人は、中にいる人へ声をかける。
「エパナスターシ王国 アルテナ公爵ヴィレム殿下お越しでございます。」
「入って頂け。」
短い返事をして、案内人はヴィレムを中へ入るように促す。ヴィレムが中へ入ると、彼より少し背の高く、紫黒色の髪の男性が立っていた。
「私が、第七十四代国王、レオナール・エイクロンだ。観戦中にお呼びだてして申訳ない。」
「改めてご挨拶申し上げます。 エパナスターシ王国 ヴィレム・アルテナと申します。祖父、ヨハン王より、公爵位を賜っております。」
「さぁ、そこへ座ってくれ。」
そう言いながら、その向かいの席にレオナールも座った。コートでは、水の魔剣を操る兵士と風の魔剣を操る騎士とが熱戦を展開している。
言葉に従い、ヴィレムが椅子に腰掛けると、そこへ変った服装の男性が現れた。
「彼は、我が国の神殿に仕える神官長のジョルジュだ。」
「私は、ヴィレム・アルテナと申します。」
ジョルジュと紹介された男性は、片膝立ちで顔をずっと伏せている。これは、プリズマーティッシュにおいて平民が王族に対して行う挨拶の姿勢らしいことは外遊前に聞いていた。
「昨晩、ジャンから話があり、神殿に仕える神官の一人が貴方の幼なじみに似ているのだとか。」
その話しで、昨日ジャンから聞き出した名がジョルジュと言う神官長だった事をヴィレムは思い出した。
「はい。陛下へ何のお話しもせず、直接ジャン殿下へお話しをしてしまい申し訳ありませんでした。」
「いやいや、その事は良い。ただ、そのエヴァリストと言う神官のこと気に掛かっているだろうと思い、老婆心ながらこうしてエヴァリストの上司であるジョルジュと貴殿を呼んだのだが…。ジョルジュは平民だが、発言を了承して頂けるだろうか。」
「もちろんでございます。」
「ジョルジュ、面をあげよ。」
礼の姿勢から静かに立ち上がった男性は、短く名乗った後、
「本日の夜、ヴィレム殿下とお話しさせて頂きたいと、エヴァリストより申し出がありました。」
「夜ですか?」
「エヴァリストには家族がありまして、まず家族に今までの事を話したいと。その後、殿下も含めた皆さまと今後について話したいと申しておりました。」
「家族が…いるのですか。」
「詳しいことは本人より話しがあると思います。」
「分かりました。」
「それと、アルテナ公爵夫人がリオに呼ばれて王宮へ行っているそうだな。」
「はい。」
「何の用だと心配であろうが、案ずることはない。」
レオナール王は、ヴィレムの顔を一瞥し明るく笑った。
「そうは言っても無理であろうな。まぁ、貴殿は、こちらで観戦すると良い。」


