王の居城であるイペロホス城は、戦乱期の国王が建てたもので、既に数百年経っている。低地にあるため防備のための高く分厚い城壁は二重になっていて、城壁を抜けると広大な森林が広がっている。最初の城門を潜ってから十分ほどかけると森で遮られていた視界が開け、川を利用した堀が見える。そこに架かる橋を越えると美しく整えられた庭園がありその真ん中には真っ直ぐに走る馬車道があり、それは城に繋がっている。三月に入って温かくなり始めたこの庭には色鮮やかな花々が咲き始めている。それが左右対称の城を更に美しく見せる。
城の天守の上部にはテラスがあって、葉と花の色が鮮明な庭や森林までもが眺望できる。そのテラスでルーセとゾフィーはお茶を飲んでいる。
「ゾフィー、ごめんなさいね。今回の孫の浅慮な行いのせいで、あなたには心痛い思いをさせてしまって。」
「いいえ、陛下。どうぞ、お気遣いなくお願い申し上げます。」
ルーセの生家の紋章にも使われているアマリリスとガーランドの繊細な柄のティーカップは、ルーセの亡き母が娘が王家へ嫁ぐときに用意したもので、他に用意された様々な物の中でも彼女はこれを何よりも大切にしていた。
「大方の話しは聞いたのよ。ウィルヘルミナやフェイルから。ユリアーナが公爵家ではなく伯爵家で出産と育児をしたいと思うまでには色々とあったのでしょう。それを聞いたあなたやエルンストが、私たち王家へ不信感を抱いたとしても、私には申し開きのしようもないことだと思っています。」
「陛下、そのようなお言葉は、」
「いいえ、ゾフィー。結婚に至る経緯も、ユリアーナの心の傷、気持を蔑ろにするものでした。結婚し、可愛いひ孫を見せてくれたのに、その幸せにあの子は何も気が付かずに…。ヴィレムには、自分の行いを省みて改めない限りユリアーナはオモロフォには戻らない。その意味も理由も自身で気がつけないのならば、この縁組みを解消する事も考えると伝えてあります。」
ゾフィーは、驚きのあまり時が止まってしまったようになった。
「その時はもちろん、ユリアーナの評判に傷が付かない様に私や陛下が十分に注意を払いますから。」
「陛下。」
ゾフィーは、首を振り、必死で言葉をひねり出す。
「陛下。今はユリアーナも我が家にいたいと言っていますが、少し落ち着けば公爵家へ帰ると言うと思います。夫婦間のことは、親ですらも分からない事もあると思いますし。私や主人はユリアーナの気持を優先したいと考えています。」
ルーセは、少しだけ笑った。
「では、ユリアーナがあの愚か者に愛想を尽かさない事を祈るしかありませんね。」
∴∵
イルセは、窓際で庭を眺めていた。出産したときは冬だったが、庭には花が咲き始め春の景色に変り始めていた。同じ頃に出産したはずのユリアーナの姿も、天気が良い日には庭で遊んでいたユリアーナの娘たちもイルセが出産してから姿を見ていない。出産して三ヶ月、初産と言ってももう出歩いても良い頃だと思うのに、ネスや他のメイドたちもイルセを部屋から出そうとしなかった。それを不自然に思いながらも、日がな一日窓際で刺繍を刺していた。
イルセの懐妊中は、あれやこれやと忙しそうに部屋を出たり入ったりしていたネスも、最近ではずっとイルセの部屋にいた。お茶や食事の給仕の時も、他のメイドがワゴンで運んで来たものをネスが差し出すような具合だった。
「来週、またエレンたちを城へ呼んでも良いかしら?お祝いももらったし、直接お礼が言いたいの。ニコラスも見せたいし。」
「旦那様より、暫くは養生に努める様にと…」
「もう私の体は元に戻ってるわ。」
「旦那様は、もう少しの間と仰っておられます。」
刺繍の手を止め、テーブルに置いた。
「ヴィレム様はお元気なの?お仕事はお忙しいの?毎日の様にお顔を見せに来て下さっていたのに、ニコラスを産んだ日から一度も姿をお見かけしていないのよ?何かあったの?もしかして、体調が悪いのは私ではなくて、ヴィレム様なの?それならばお見舞いに伺いたいわ。」
「旦那様は、達者でいらっしゃいます。お祝いなどが多かったので、そのお礼などでお忙しいだけでございます。旦那様は折り目正しいお方でございますので、ユリアーナ様のお祝いも含め、皆様に丁寧なお礼をされていらっしゃいますので。」
イルセは、安心した様に息を吐いた。
「そう。何もないのなら良かったわ。わかった。忙しい旦那様のお手を煩わせてはいけないわね。なら、ニコラスのおくるみの刺繍は終わったから、ユリアーナ様のお子様の刺繍もしようかしら…女の子ならば淡くて可愛いお色の方が良いかもしれないわ。それか…私、バラやユリみたいな華やかなお花が好きだから、モチーフはバラとかユリが良いかしら?お名前はもう決まったのかしら?」
「…お決まりのようですが、失念してしまいました。もう一度確認しておきますね。」
「えぇ。お願いね。これからは私がアルテナ公爵家を支えなければならないもの。次期公爵の母として。ユリアーナ様の産んだお子様達も我が子として考えなければならないものね。女の子はお召し物も華やかに出来るし、考えるのも楽しいわね。お名前ちゃんと聞いておいてね。モチーフのデザインを先に考えているから。」
「はい。申し訳ございません。」
イルセは、ネスに向って微笑みながら頷いた。その笑顔が綺麗で、ネスは悲しくなった。
∴∵
「そんなことを陛下がおっしゃったの?」
「えぇ。この事は、ヴィレム殿下にはもう伝わっているみたいよ。」
「この前、ウィルヘルミナが来た時には何も言っていなかったけれど。私に離縁の意思がないことを知らせるためにも早々に帰った方が良いのかしら。」
ユリアーナは、思案顔のまま一度持ち上げたティーカップを戻し、 ‘でも’ と続けた。
「旦那様の女と言う性別に対する考え方に疑問を感じている部分があって、けれどそれはこの国が、社会が作っているものであって、旦那様一人をどうこうしても仕方ないと思っている部分もあったの。」
ゾフィーは静かに頷く。それを見てユリアーナは少し微笑んで、話しを続ける。
「それに、考え方は多様であって当たり前だと思うし、私の考えだけが正しいわけでも全てなわけでもないと考えると、旦那様の考えを無理矢理に私の考えの方へ近づけようとするのも違うでしょう?娘が生まれて、最初は戸惑うことがあっても、成長すれば少し意識も変っていくかと思ったけれど、そうとはならなかった。今までの事を考えると、これは旦那様の意識を自然と変化させるのには良い機会なのかとも思うの。価値観の全てを変える必要はないけれど、私が持つ考えも認めてくれる寛容さを持って欲しいと…違うわね、女も男も等しく一人の人間はそれぞれの価値観や考えがあるのだという事を認めて欲しいのかな。」
「私も旦那様と…あなたのお父様と結婚した時、価値観の違いに戸惑ったわ。」
ユリアーナは驚いて、ゾフィーに尋ねる様な視線を向ける。
「何が?と思うでしょうけれど、世間的にはあなたのお父様の様な考え方が珍しくて、少数なのよ。結婚当初、仕事から帰ってきて、一日自分が扱った案件のことを私に話して、悩みを口にし、意見を聞く旦那様に戸惑ったわ。国政の事なんて私は今まで学んでこなかったし、その必要はないと両親にも言われていた。私もそうだと思っていたし。だから、旦那様の話しの半分も理解出来なくて、答えられることなんて何もなかった。」
ゾフィーは何を思い出したのか、少し笑った。
「旦那様に悪気はなくとも、人って自分が無知で無力だと思い知らされる事で傷つくでしょう?この人と上手くやっていくのは無理かもしれないと何度も思ったわ。」
「お父様とお母様はずっと仲睦まじいものと…。気付かずにごめんなさい。」
「仲が悪いわけではないわよ。旦那様はとっても優しい方だし、子煩悩で申し分ない人よ。だけれど、そんな側面もあるって事。旦那様から見たら、私は打てば響く様な反応がなく不満を感じているかもしれない。でもね、時をかけながら互いの妥協点を見つけてきたのよ。」
ユリアーナはゾフィーをしっかりと見つめた。
「自分の人生はそんなに長くない、だからそんな時間をかけるほど、相手に価値はないと思うのであれば、離別を選択すれば良いのだし、相手にその価値があると思えば、辛抱強く互いの妥協点を決めていく。夫婦に限らず、人付き合い全般に言えることね。」
「コンスタンティンが行方知れずになってすぐの縁談だったから、最初こそ困惑はしたけれど、この結婚だって私自身が考えて決めたことなのよ。私が断わることが出来なく、どうしようもない状況で旦那様に嫁いだと思っている人もいるようだけど。初めて二人でお茶をしたとき、顔を赤くされて、しばらく何もお話しにならなかったの。」
ユリアーナは、優しく笑った。
「社交界では、そつなく色々な方とお話しになっていた印象だったのに、何度も何かを言い淀んで、やっと私に言ったの。 ‘君を守らせて下さい’ って。あんな殿下を今まで一度も見たことがなかったから、何だか、不敬だけれど、可愛らしいお方だと思ったの。」
ゾフィーも優しく笑って、一つ頷いた。
「旦那様は、一生懸命私を守ろうとして下さるけれど、私にも旦那様を守る力を付けさせて欲しいのよ。」
「私の兄が良く言っていたわ。いつもね、鞄を持って歩くのよ。私が自分で持たずとも良いのにと言うと兄は、荷物があった方が安心して歩けるんだと言うの。男の人は人生に於いて兄と同じ様な考え方なのかもしれないわね。少しくらいの荷物があった方が、人生を安心して歩いて行けるのかも。自分の足をしっかり地に着けるための重りみたいな。」
「私は荷物にはなりたくないの。旦那様の支えになりたいのに。」
「後は、殿下とユリアーナがどうやって折り合いをつけていくかね。」
城の天守の上部にはテラスがあって、葉と花の色が鮮明な庭や森林までもが眺望できる。そのテラスでルーセとゾフィーはお茶を飲んでいる。
「ゾフィー、ごめんなさいね。今回の孫の浅慮な行いのせいで、あなたには心痛い思いをさせてしまって。」
「いいえ、陛下。どうぞ、お気遣いなくお願い申し上げます。」
ルーセの生家の紋章にも使われているアマリリスとガーランドの繊細な柄のティーカップは、ルーセの亡き母が娘が王家へ嫁ぐときに用意したもので、他に用意された様々な物の中でも彼女はこれを何よりも大切にしていた。
「大方の話しは聞いたのよ。ウィルヘルミナやフェイルから。ユリアーナが公爵家ではなく伯爵家で出産と育児をしたいと思うまでには色々とあったのでしょう。それを聞いたあなたやエルンストが、私たち王家へ不信感を抱いたとしても、私には申し開きのしようもないことだと思っています。」
「陛下、そのようなお言葉は、」
「いいえ、ゾフィー。結婚に至る経緯も、ユリアーナの心の傷、気持を蔑ろにするものでした。結婚し、可愛いひ孫を見せてくれたのに、その幸せにあの子は何も気が付かずに…。ヴィレムには、自分の行いを省みて改めない限りユリアーナはオモロフォには戻らない。その意味も理由も自身で気がつけないのならば、この縁組みを解消する事も考えると伝えてあります。」
ゾフィーは、驚きのあまり時が止まってしまったようになった。
「その時はもちろん、ユリアーナの評判に傷が付かない様に私や陛下が十分に注意を払いますから。」
「陛下。」
ゾフィーは、首を振り、必死で言葉をひねり出す。
「陛下。今はユリアーナも我が家にいたいと言っていますが、少し落ち着けば公爵家へ帰ると言うと思います。夫婦間のことは、親ですらも分からない事もあると思いますし。私や主人はユリアーナの気持を優先したいと考えています。」
ルーセは、少しだけ笑った。
「では、ユリアーナがあの愚か者に愛想を尽かさない事を祈るしかありませんね。」
∴∵
イルセは、窓際で庭を眺めていた。出産したときは冬だったが、庭には花が咲き始め春の景色に変り始めていた。同じ頃に出産したはずのユリアーナの姿も、天気が良い日には庭で遊んでいたユリアーナの娘たちもイルセが出産してから姿を見ていない。出産して三ヶ月、初産と言ってももう出歩いても良い頃だと思うのに、ネスや他のメイドたちもイルセを部屋から出そうとしなかった。それを不自然に思いながらも、日がな一日窓際で刺繍を刺していた。
イルセの懐妊中は、あれやこれやと忙しそうに部屋を出たり入ったりしていたネスも、最近ではずっとイルセの部屋にいた。お茶や食事の給仕の時も、他のメイドがワゴンで運んで来たものをネスが差し出すような具合だった。
「来週、またエレンたちを城へ呼んでも良いかしら?お祝いももらったし、直接お礼が言いたいの。ニコラスも見せたいし。」
「旦那様より、暫くは養生に努める様にと…」
「もう私の体は元に戻ってるわ。」
「旦那様は、もう少しの間と仰っておられます。」
刺繍の手を止め、テーブルに置いた。
「ヴィレム様はお元気なの?お仕事はお忙しいの?毎日の様にお顔を見せに来て下さっていたのに、ニコラスを産んだ日から一度も姿をお見かけしていないのよ?何かあったの?もしかして、体調が悪いのは私ではなくて、ヴィレム様なの?それならばお見舞いに伺いたいわ。」
「旦那様は、達者でいらっしゃいます。お祝いなどが多かったので、そのお礼などでお忙しいだけでございます。旦那様は折り目正しいお方でございますので、ユリアーナ様のお祝いも含め、皆様に丁寧なお礼をされていらっしゃいますので。」
イルセは、安心した様に息を吐いた。
「そう。何もないのなら良かったわ。わかった。忙しい旦那様のお手を煩わせてはいけないわね。なら、ニコラスのおくるみの刺繍は終わったから、ユリアーナ様のお子様の刺繍もしようかしら…女の子ならば淡くて可愛いお色の方が良いかもしれないわ。それか…私、バラやユリみたいな華やかなお花が好きだから、モチーフはバラとかユリが良いかしら?お名前はもう決まったのかしら?」
「…お決まりのようですが、失念してしまいました。もう一度確認しておきますね。」
「えぇ。お願いね。これからは私がアルテナ公爵家を支えなければならないもの。次期公爵の母として。ユリアーナ様の産んだお子様達も我が子として考えなければならないものね。女の子はお召し物も華やかに出来るし、考えるのも楽しいわね。お名前ちゃんと聞いておいてね。モチーフのデザインを先に考えているから。」
「はい。申し訳ございません。」
イルセは、ネスに向って微笑みながら頷いた。その笑顔が綺麗で、ネスは悲しくなった。
∴∵
「そんなことを陛下がおっしゃったの?」
「えぇ。この事は、ヴィレム殿下にはもう伝わっているみたいよ。」
「この前、ウィルヘルミナが来た時には何も言っていなかったけれど。私に離縁の意思がないことを知らせるためにも早々に帰った方が良いのかしら。」
ユリアーナは、思案顔のまま一度持ち上げたティーカップを戻し、 ‘でも’ と続けた。
「旦那様の女と言う性別に対する考え方に疑問を感じている部分があって、けれどそれはこの国が、社会が作っているものであって、旦那様一人をどうこうしても仕方ないと思っている部分もあったの。」
ゾフィーは静かに頷く。それを見てユリアーナは少し微笑んで、話しを続ける。
「それに、考え方は多様であって当たり前だと思うし、私の考えだけが正しいわけでも全てなわけでもないと考えると、旦那様の考えを無理矢理に私の考えの方へ近づけようとするのも違うでしょう?娘が生まれて、最初は戸惑うことがあっても、成長すれば少し意識も変っていくかと思ったけれど、そうとはならなかった。今までの事を考えると、これは旦那様の意識を自然と変化させるのには良い機会なのかとも思うの。価値観の全てを変える必要はないけれど、私が持つ考えも認めてくれる寛容さを持って欲しいと…違うわね、女も男も等しく一人の人間はそれぞれの価値観や考えがあるのだという事を認めて欲しいのかな。」
「私も旦那様と…あなたのお父様と結婚した時、価値観の違いに戸惑ったわ。」
ユリアーナは驚いて、ゾフィーに尋ねる様な視線を向ける。
「何が?と思うでしょうけれど、世間的にはあなたのお父様の様な考え方が珍しくて、少数なのよ。結婚当初、仕事から帰ってきて、一日自分が扱った案件のことを私に話して、悩みを口にし、意見を聞く旦那様に戸惑ったわ。国政の事なんて私は今まで学んでこなかったし、その必要はないと両親にも言われていた。私もそうだと思っていたし。だから、旦那様の話しの半分も理解出来なくて、答えられることなんて何もなかった。」
ゾフィーは何を思い出したのか、少し笑った。
「旦那様に悪気はなくとも、人って自分が無知で無力だと思い知らされる事で傷つくでしょう?この人と上手くやっていくのは無理かもしれないと何度も思ったわ。」
「お父様とお母様はずっと仲睦まじいものと…。気付かずにごめんなさい。」
「仲が悪いわけではないわよ。旦那様はとっても優しい方だし、子煩悩で申し分ない人よ。だけれど、そんな側面もあるって事。旦那様から見たら、私は打てば響く様な反応がなく不満を感じているかもしれない。でもね、時をかけながら互いの妥協点を見つけてきたのよ。」
ユリアーナはゾフィーをしっかりと見つめた。
「自分の人生はそんなに長くない、だからそんな時間をかけるほど、相手に価値はないと思うのであれば、離別を選択すれば良いのだし、相手にその価値があると思えば、辛抱強く互いの妥協点を決めていく。夫婦に限らず、人付き合い全般に言えることね。」
「コンスタンティンが行方知れずになってすぐの縁談だったから、最初こそ困惑はしたけれど、この結婚だって私自身が考えて決めたことなのよ。私が断わることが出来なく、どうしようもない状況で旦那様に嫁いだと思っている人もいるようだけど。初めて二人でお茶をしたとき、顔を赤くされて、しばらく何もお話しにならなかったの。」
ユリアーナは、優しく笑った。
「社交界では、そつなく色々な方とお話しになっていた印象だったのに、何度も何かを言い淀んで、やっと私に言ったの。 ‘君を守らせて下さい’ って。あんな殿下を今まで一度も見たことがなかったから、何だか、不敬だけれど、可愛らしいお方だと思ったの。」
ゾフィーも優しく笑って、一つ頷いた。
「旦那様は、一生懸命私を守ろうとして下さるけれど、私にも旦那様を守る力を付けさせて欲しいのよ。」
「私の兄が良く言っていたわ。いつもね、鞄を持って歩くのよ。私が自分で持たずとも良いのにと言うと兄は、荷物があった方が安心して歩けるんだと言うの。男の人は人生に於いて兄と同じ様な考え方なのかもしれないわね。少しくらいの荷物があった方が、人生を安心して歩いて行けるのかも。自分の足をしっかり地に着けるための重りみたいな。」
「私は荷物にはなりたくないの。旦那様の支えになりたいのに。」
「後は、殿下とユリアーナがどうやって折り合いをつけていくかね。」


