「桜坂」 その声が聞こえて振り向いた瞬間に抱き寄せられる。驚いて声を上げる間もなく、見慣れた顔が眼前に迫る。 「俺とキスできる?」 待って、と言う間もなく唇が重なる。思わず目を瞑ればすぐに唇は離れた。 「松隆くん、」 「君が幕張匠だと知られたら、菊池のいい人質になってくれるだろうね」 キスしていたのは松隆くんだったはずなのに、はっと目を開けば、目の前では鹿島くんが笑っていた。どくん、と恐怖で震えた体は一層強く抱きしめられる。 「分かったら嫌がるのはやめなよ」