「暑、」
顎のとこで切り揃えたばっかりの髪が、うざったく風に晒される。温い風。気温と混ざって冷却には足りない。
海が近いはずのこの道も、視界に入る砂浜のおかげで眩しくて嫌になるほど。
暑い。年々暑苦しい。買ったばかりのミネラルウォーターで喉を潤した。
冷たさが癖になる。それでも許してあげないけど、この暑さのことなんて。はあ、と息を吐き出してペットボトルのキャップを捻った。
夏がこんなに暑いなんて毎年実感してる。
「はやくどっか行きたいなー」
ここじゃないどこかに行ってみたい。
髪をテキトーにぐしゃぐしゃと乱した。どうせ風で流れてしまう。そのついででどっか行きたい。
ここじゃないどこか。
そこに行けない、まだ子どもだって、嫌になるほどわかってる。
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「おはよー、糸川」
午後から授業だったため、クラスメイトが疎らに集まり始めた教室、友人の声に視線を上げた。
「うん、おはよう」
オリーブブラウンの髪、今日も決まってるな、と思っている私に彼女は顔を顰める。



