こわれて星




睨み合いを続ける2人の間に入って宥める、ってことをするほど関係値があるわけじゃない。だから放っておこうということを決め込んで、芽吹の鞄の紐を引く。



「うん?」

「ごめん、先帰る。あとはゆっくり」



紐から離してひらりと手を振ると、芽吹はすこし驚いたような表情を浮かべた。それを肯定と受け取って頷く。


そのまま置いていこうと背を向けた私は、数秒後また足を止めた。



「待って」



肩にかけていただけの鞄が、後ろから引っ張られる。



「ほら、大した用じゃねーだろ。さっさと終わらして」

「何で俺が指図されなきゃならねーんだよ、…はい、ご注文の品」



呆れながら肩越しに振り返ると芽吹は空いている方の手で缶ジュースを受け取っていて、抵抗していたはずの肩の力が抜けた。


あまり見ないような、コーラの赤い缶。コーラはペットボトルの印象が強くて何だか物珍しい気分になる。


というかそもそも何で。



「何でコーラ?」



芽吹に方に向き直れば彼は無表情で視線を流して、



「対決勝ったから」



と一言言った。



「バスケの?」

「うん」

「運動できたんだね」

「それ褒めてんの?」



コーラの缶を渡されて、ちょっと珍しくて意味なく眺めてみる。まだ冷えていて、この人が急いでいた理由がわかった。


あと、私が奢らなくてもいい理由も。


缶を芽吹に返して、その人を何気なく見てみると、目が合った。というか私を凝視していた。



「じゃ、解散ね。帰ろ」



芽吹が言ったことが聞こえていない様子のその人は固まったまま私を凝視して動かない。目が合った手前、逸らすのも気まずい。


ぼうっとその人の後ろの、奥の方に見える木に意識をシフトしていると、何か聞こえた。


呟く程度のそれを聞き返すより先に、その人は怪訝そうな表情を浮かべる。



「深山の彼女?」