「何? 見すぎ」
「なんかいつも違くて、新鮮で」
「彗も大概だけど」
すこし困ったように眉を下げた芽吹に、思わず笑った。意味がわからなくて。なんて。なんて。
「そうかな」
「急に真顔になんの」
笑いがおさまると、今度は彼が笑い始めた。手で口元を隠してるけど角度的に見えてるってこと、たぶん気づいていない。
何がそんなに面白かったのか、芽吹のツボはいつまで経っても理解できないと思う。話を続け始めた私に、芽吹は笑いをおさえながら。
否、全然おさえられないまま相槌を打つ。
「深山!」
ようやく笑いがおさまった、と芽吹が冷静になった時、聞き覚えのある名字が聞こえた。
芽吹には聞こえなかったようで、足を止めた私に彼は続けて足を止めて首を傾げる。
「無視してんじゃねーぞ! 深山!」
後ろを振り向くと、誰かが凄い勢いで此方に走ってきていた。
「呼ばれてるよ、芽吹」
「ほんとだ」
みやまって芽吹だよね。うん俺。
と再確認事項みたいに会話をしていると、走ってきていた誰かは足を止めて。息を整えるように両膝に両手を当てて下を向く。
すぐに顔を上げると姿勢を戻してズカズカと足早に近づいてきた。
「何かしたの?」
「心当たりがない」
怒っているようなその人の顔に、思わず芽吹の方を見る。芽吹はぼうっとした眼で眠そうに欠伸をした。
「おいお前、ふざけんなよ」
固い声がそう言う。その人は眉根を寄せた表情で立ち止まり、芽吹を睨みつけた。
深い栗色の髪、長身。色白な芽吹と違って、健康そうな小麦色。奥二重の眼は意思が強そうに細められて、真っ直ぐ芽吹に向いている。
面識のない人の登場に頭のなかが疑問符で占めた。芽吹は相変わらず無表情でいるけれど、この人は芽吹に用があるみたい。
「めんどくせー注文しやがって」
「あ、そ。何か用?」
「話聞いてたか?」
見るからに話、聞いてない芽吹は、すこし黙ったあとに首を傾げた。
「知らね」
「はァ?」



