「何してんの」
前にも聞いた台詞ですね、って、言わないけれど。
平静を装って前を向くと数十歩先に芽吹が突っ立っていて。私を見て、薄い微笑みを浮かべていた。
歩くのがすこし早すぎたみたい。それか、芽吹が振り返った。どっちが先だったのかわからない。
「居残りだったから帰ってる」
「ふーん」
「芽吹は?」
構わず歩き出せば、彼は一瞬俯き顔を上げて、無表情で「じつは」と続けた。
「対決挑まれて」
「対決?」
「バスケしてた」
バスケ対決、ってなんか意外。
芽吹が運動をしているところがあまり想像出来なかったせいで首を捻るしかない。
「こんな暑いなか元気だね」
「労わってくれんの」
あと数歩の距離になると、彼は私に背を向けた。肩越しに此方を見る芽吹の目元は涼やかで、夏が似合わないな、なんてまた思って。
「帰ろーぜ」
なんか、苦しくなる。
「奢らないよ」
今日は疲れてるっていうのに芽吹を追いかけて、気持ちの切り替えをコントローラーごと地面に叩きつけた気分。
冷静が訪れない。動揺は訪れない。私の知っている彼だった。
「じゃ次ね」
「コンビニ行く前提なんだ」
「いや今日は、」
歩く速度を落としてくれた芽吹は、私を見てなぜか苦笑する。それも一瞬で、意味がわからないまま頷いた。
正門は通り過ぎ、帰路につく。他愛ない会話を続けているとちょうど前方に沈もうと傾く陽に目が眩んだ。
彼もそう思ったようで、小さく、まぶしいと呟く。
まぶしくて、あつくて。橙。
見上げた先の芽吹の顰め面も、夕日をうつしてきれいだと思った。



