今日だってずっと彼ばかりだ。
会っていても会っていなくても、私と彼を除いて回り続ける世界について。あれこれ考えてばかりだ。
思考をストップさせたくて溜め息を吐き出す。それで少しだけ緩和された暑苦しい外に一歩踏み出す。
窓越しだった部活生の声が鮮明になって、ようやく現実味に私を置くことができて、安堵した。見ることができてるって、ちゃんと。
思考の波に溺れるのは夜だけでいい。
正門に向かって10から1つずつカウントをする。そうすれば気持ちの切り替えができるって、誰かの受け売りを実践中。9、8、7。次で6を刻もうとふと顔を上げた。
後悔する。
それで思考は後戻りした。
「なんで、」
なんでいるの。
目立つ髪色が、すこし違う光を帯びて。颯爽と前を歩いている。白いシャツの背中が眩しい。
「しらないふりで行くか」
振り返すことがない芽吹の背中に、聞こえないように悪態ついた。でも彼はやっぱり世界でブレずに動かない。
時間帯的に和らぐはずの暑さが定まらず、夕日を逐一恨み続ける。振り返らないで欲しい。私は、私じゃなくなりたくない。
今日は特に。
私じゃない。
7月なんて消えてしまえば。
10、9、8、7。再びカウント始めて。7で止まって、夏を恨む。季節の暑さが増す度に茹だった圧迫感が迫ってくる。
視線ごとぜんぶ、逸らした。
自分の空間認知力に委ねて正門に向かう。部活生の懸命な姿は夏に似合うの、変わらない原理なんだと再確認。
それなら、この焦りは絶対に。
「彗?」
似合わない筈だ。
「っ、」
あからさまに足が止まる。
咄嗟に飛び出た動揺で息をのんでしまった。



