「深山くんに喧嘩売りにきたらしいよ」
「喧嘩、」
芽吹に?
自分の席に座り、怠そうに頬杖をついている芽吹。の、視線の先には何か言ってる男子が1人、芽吹を見下ろしながら佇んでいる。
「だれ?」
「隣のクラスの砂原くんだよ、砂原 裕。色んな部の助っ人してる人」
「あー、ね」
「あんた絶対わかってないでしょ」
深い栗色の髪で、センターパート。隙間から覗いたせいで姿はあまりよく見えなかったけれど、背は高そうだった。
体勢を元に戻し、別に誰が誰に喧嘩を売ろうがカンケーないから、声を掛けて道をあけてもらう。教室を見にくるのはいいけど、授業、遅れないのかな。
集まっている女子のなかで、何人かは芽吹のことばかりを話していて、勝手に私の耳に入ってきた。
凄い。椅子に座ってぼうっとしているだけで、芽吹は絵になるらしい。
「っだから、次は俺が勝つからな!」
教室に入ると、芽吹の前で何か言ってる人の声が聞こえてくる。
横目でちらりと見ればその人の手には白い紙が握られていた。テストの点数でも競っていたらしい。平和すぎる。
「ちょっと糸川、何堂々と先行ってるの」
「だって飽きたし」
後ろから腕を引っ張られて振り向くと、サキが私の返事に慌てながらも笑いをこらえていた。
「あき、飽きたって、あんた、」
「痛い痛い」
小声でそう言って私の肩に抱きついてきたサキに、小声ながら訴えてみる。効果はないし、彼女の笑いの振動が伝わってきて。
「サキ笑いすぎ」



