「何と何と〜彼氏できたあ〜」
見た目がすっかり今的清楚美人になってしまったサキが、うれしそうに笑って、廊下で会うなり抱きついてくる。
彼氏できた、サキに。
ああ、あの他校の彼か。
「おめでとう、サキ」
「それおめでとうって表情?」
「え? どんな顔してるの私」
「こーんな顔してるよ」
眉間に皺を寄せてみせた彼女に首を傾げた。
そういう顔、別にしてなかったと思うけど。
「サキのこと、よく知らない人に取られた」
「糸川のそれ天然なの? かわいくてムカつくんだけど」
頭を撫でてくるサキの照れたような、怒ったような、表情にさらに脳内で疑問符が浮かぶ。言ったこと、本当のことだ。
「ほんとのこと言っただけ。ちゃんとおめでとうって思ってるよ」
「ええー、ふふ、ありがとね糸川。そのうち紹介するからね」
「私に紹介してどーすんの」
「彼の友だちもついでに紹介してみようかなって。糸川に会ってみたいって言ってる人いるから」
たのしそうに声を弾ませている彼女の腕を引っ張る。
またわるい癖が出てる、この子は。
サキは私を、自分の彼の友人に会わせたがるのだ。
「サーキーちゃん、また?」
「今回は違うの! 私のせいじゃないのー」
首を横に振るサキをじっと見つめる。言葉を詰まらせるわけでも、悪びれるわけでもなく、にこにこしているサキ。
これで何度目だと呆れてしまう。



