「可愛がられてるんじゃなくて?」
「滅茶苦茶だよ、俺の反応で楽しんでるもんあいつら」
げんなりした言い方をする芽吹に笑いが込み上げてくる。
「きっと芽吹がかわいいんだよ」
「笑いながら言われても説得力ねーから」
風が吹いたおかげで髪が靡いて顔が隠れた。
わらってるの、これ以上見られたら機嫌悪くなっちゃうかな。たぶんならないと思うけど。
口腔のアイスが溶ける。
時間が早いせいで人が少ない道、住宅地まですぐだった。
案内されなくてもわかってしまう足取りに、会話はそこそこで続きながら、一軒家の前に止まる。
「深山家お金持ち感すごいよね」
「あー、よく言われる」
お洒落なつくりの門を開ける彼に続いて、ゆっくりと歩く。私を置いてスタスタと玄関まで行き、鍵を開けた芽吹は私の名前を呼んだ。
「早く。暑いだろ」
まだ汗を流すほどじゃない。風で緩和された暑さに、溜め息を吐き出す。
まだ、初夏。
「お邪魔しまーす」
「どーぞ」
靴を脱いで揃えていると、芽吹は一人で扉を開けて一室に入っていった。
人の家をウロウロする訳にもいかずに突っ立っていると、ポケットに入れっぱなしになっていたスマホが震える。
取り出して画面を見てみると、SNSのどうでもいい通知だった。指でスライドして消去。サキからのメッセージにだけ素早く返信する。
サキは今日あの彼と何人かのグループで会うことになったらしい。いつもは単調な文が今日は絵文字なんてついている。
「彗」



