視線を上げた彼は首を傾げて私を見た。
「ずるい?」
「うん、なんか」
「彗の言うこと、時々謎」
「芽吹に言われたくないよ」
よくわからない。
そう言えば、彗もね、と芽吹はわらった。
「あ、新刊、買ってきた」
「読みに行ってもいい?」
「じゃ、勉強おしえて」
そんな会話をしながら太陽下で歩くのはよくあることだけど、こんなに暑いと気にすることも無くなってしまう。
芽吹のことをすきな子たちに申し訳ないとか、噂とか、学校では気にすることもどうでもよくなって。薄情かも。でもカンケーない。
不意に芽吹が、私の鞄を引っ張った。
よろけながら彼の方に寄るとすぐ側を自転車が通り過ぎていく。
「危ねー、」
「ごめん、ありがとう」
「いーよ」
彗はこっちね、と肩を押されて何となく芽吹を見上げた。
こういうこと、芽吹以外のひとにされたことがない。
「そういえば芽吹は、きょうだいいるの?」
「いるよ。兄と姉」
「末っ子なんだ」
「よく遊ばれてる」
こういう気遣いが自然にできてしまうの、何だか教育されたっぽいな、って予感は半分的中しているかもしれない。
芽吹の表情はすこし不機嫌そうに見えたから、よく遊ばれてるっていうのは、可愛くて弄られてるって意味なのかな。



