実は、お試しの交際であることを秘密にして欲しいとお願いされた時。
萌絵ちゃんにだけは真実を話したいと懇願した。
ただ、あの時の氷乃瀬くん…。
許可はしてくれたものの、あまり気が進まない様子だったんだよね。
「……ごめんね」
「急にどうした?」
「お試しで付き合ってること、本当は萌絵ちゃんにも共有しないで欲しかったでしょ?」
「正直言うと最初はそうだった。でも陽咲の友達なら、誰彼かまわず言いふらしたりするようなヤツじゃないだろ?だから今はそんな風に思ってないよ」
「そっか、ありがとう」
今の心境を聞いて胸を撫で下ろしていると、氷乃瀬くんはハッとした表情の後、気まずそうに苦笑した。
「俺、女子の顔や名前を覚えるのが苦手なんだ。だからさっきも、間違ってないか不安だったというか…」
「そうだったんだ。でも、私のことは毎回サラッと呼んでくれてたよね?」
「陽咲のことを覚えないとか有り得ないから。名前だって知りたいと思って俺の方から聞いたぐらいだし」
そう言えば、保健室に付き添った時に聞かれた気が…。
確か出会った翌日の出来事だったよね。
じゃあ、あの時には既に特別な女の子だと思ってくれていた…ということ?


