春待つ彼のシュガーアプローチ


この交際が“お試し”であることは誰にも言わないで欲しいと、事前に氷乃瀬くんからお願いをされている。


そんな事実が広まってしまうと、仮の彼女でいいから付き合いたいという女の子たちが出てきて面倒なことになるというのが理由だ。


今のだって、本当に付き合ってるという体だからこその言葉。


それが分かっていても心が過剰な反応をしてしまうのは、告白されたから…なんだろうな。


「行こう、陽咲」


氷乃瀬くんは私の手を握る。


目を丸くして驚いている3人組の女の子たちを放置して、その場を離れた。


すれ違う生徒たちの視線を浴びながら中庭へ。


心地よい春の陽気だからか、普段よりも多くの生徒で賑わっていた。


「友達と中庭でお昼ご飯を食べる時は、ここに座ることが多いんだ。この角度から見る景色が好きなの」


「お気に入りの位置ってことか。友達って確かキクシマさん…だっけ?」


「うん」


なんか萌絵ちゃんの苗字のところで急にトーンダウンしたというか、棒読みだったよね?


やっぱり、あれが原因かな。