その後、あたしは面子たちとトランプで遊んでから輝のバイクで家に帰った。
倉庫で気になったことを確認するため、制服も脱がずに荷物だけ置いて電話をかける。
『──雨?』
相手はワンコールですぐに出た。
なんだかいつもより声が低いような……。
「父さ、」
『お前、あいつらの姫なってから一度も帰ってないだろ。組の奴らも寂しがってる』
……父さん、の一言すら言えなかった。ちょっと遮るの早すぎない?
それに寂しがってると言われても、この前父さん家に行ってからまだ一週間程度しか経ってないんだけど!
「……また今度、暁とコウも誘って行きますね」
父さんには姫になったことを、その日のうちに電話で伝えてある。
返事は「そうか」の一言だけだったけど素っ気ないとは思わなかった。
『あぁ。……それで、今日はどうした。何かあったか』
「実は一つ父さんに確認したいことがありまして」
『何だ』
「浅葱さんの息子」
『……』
黙った。
「──わかりました。ありがとうございます」
ピッと通話を切る。
驚きはしたけど……なるぼどなぁ。
“浅葱さんの息子”
それだけが理由でない気もするが、彼のあの態度や目には少し納得がいった。
いつも作り笑顔を張り付けて、仲間以外の外部の人間には異常に警戒心が強い彼。何もかも疑っているような酷く冷たい瞳。
それらを思い出しながら、あたしは通話終了の画面を閉じて電話帳を開く。
カチカチと下へ操作すれば、新しく追加された彼の名前が目に留まった。
────千々松 藍。



