「飴、いるか?」



 急にパチッと目を開け体を起こした輝。


 ごしごしと目を擦りながら、ポケットから出したもう片方の手をずいっとあたしの前に突き出した。



「……」


「いらねぇの?」


「えっ……あ、ありがと」



 咄嗟のことでつい受け取ってしまった黄色の飴。


 戸惑うあたしを尻目に、輝は自分の製カバンからおしゃれな黒ポーチを取り出す。彼が金のチャックを開けた時、あたしは自分の目を疑った。



「待って、何でそんなにあんの!?」



 パンパンに膨れ上がった黒ポーチの中から出てきたのは、大量のカラフルな飴ちゃんたち。



「食べるから」


「いや……それにしても限度ってものがあるじゃん?」


「三日でなくなる」



 マジかよ。一日に何個食べてんだこいつ。



「……もっといるか」



 ポーチの中をじーっと見ていたからか、輝がもう一つ飴をあたしに差し出す。


 手の平の上にあるのはさっきと同じ飴で。黄色のパッケージに『バナナ味』というポップな文字────



「いやだからバナナ味ってなんで!? なんでそのチョイス!?」


「お前バナナ好きだろ」


「言った覚えがない!!」