「──待たせてごめん!」
倉庫を出てすぐの所に停まっていた輝のバイク。また投げ渡された黒のメットを被り、あたしは急いで後ろに飛び乗る。
「……家どこだ」
「家?」
あっ、通りでなかなか発進しないと思ったら。
あたしが家の住所を伝えると、輝はバイクのエンジンをかけて右手のグリップを手前に回した。
(気持ちいい……)
橙色に染まった空の下、清々しい風が身体を突き抜ける。
安全運転に変わりはないが、行きよりも少しスピードが出ていた。
……可笑しな状況だな。
運転してる目の前の男は関東一の族の総長。そして後ろに乗ってるあたしは彼らの“姫”だ。
この前まで守る側だったあたしが、まさか今度は“守られる側”になるなんて────…。
ビュンビュンと移り変わるこの景色みたいに、日常が急激に変わっていくような気がした。



