「そろそろ行くか〜」
「え、もう?」
今着いたばっかだし、もうちょっと部屋でくつろぎたいんだけど……
「さっさと終わらせた方が気が楽だろー?」
強面の奴もたくさんいるしな〜と藍がゆっくり立ち上がる。
「なんだ。あたしてっきり自分が早く終わらせたいからだと思ってたよ」
「……早く行こうぜ〜」
「えっ、今の間なに? 本当にそういう意味だった!?」
「あー、早く行って早く終わらせてダラダラしてー」
「もう言っちゃってんじゃん!!」
なんなんだよ! あたしの為じゃないのかよ!
出まい出まいと踏ん張っていたが、藍に背中をぐいぐい押され半ば無理やりドアの外に押し出された。つーか蹴り出された。ひっど!!
そうやって幹部部屋から出てきたあたしに、一階にいる面子たちの視線がビシビシ突き刺さる。
「おい、今藍さん蹴らなかったか?」
「藍さん女には優しいのに……」
「えっ、あの人が姫なんじゃねーの!?」
ざわざわと下が騒がしくなり、そんな声が上にまで聞こえてきた。
いやいや、女には優しいって……どこが!?
今までの藍の行動を振り返ってみる。
何でも疑う。
跡が残る強さで手首を掴む。
蹴る。
……うん。まったく優しくないな。
何か優しくされたことあったっけなーと必死に見つけ出そうとしていれば。
「も、もしかして“男”だったりして!」
声の主は目立つモヒカン頭。
大声でそんな馬鹿なことをぬかしやがった。
(……マジでふざけんな)
後ろで「あー靴紐ほどけた」と呑気にしゃがんでいる奴の襟首を片手で掴み、ぐいっと力任せに引き上げる。
驚いた藍の顔がすぐ目の前にきた。
「お前のせいで性別まで疑われてんじゃねぇか!!」



