ホームルームも終わり少ない荷物を制カバンに詰めていると、前の席の和樹が振り返った。



「今から倉庫に行くって、想乃さんに言われてるよな?」


「バイクで向かうから早く駐輪場に行こ!」



 ちょうど制カバンを肩にかけた時、あたしの側に来た香がぎゅっと腕に抱きついてきた。


 相変わらずかわいいなぁ……って痛い痛い!!



「香! ちょっと離れて!」


「えーやだー」



 いやほんと離れて! マジで痛いから!!



「香って怪力なんスよねー」



 言うの忘れてたっス!と暁なみに苛つくウインクを披露してきた太郎。


 この顔でこの怪力とかもう詐欺だろ……痛い痛い痛いッ!



「和樹!」



 香は早く行こうと急かすだけで話を聞いてくれないし、太郎は煎餅を食べ始めたから、残るは和樹しかいない!と彼に助けを求めた────が。



「校門まで頑張れー」



 助けてくれなかった。くそ、この薄情者!!



「覚えてろよぉおお!」



 ……そんな雑魚キャラの捨て台詞みたいな叫び声が、この長い廊下に響き渡った。