(……なるほど。二人ともモテるんだろうな)



 和樹は年の割にクールで落ち着きがあるし、香はふとした仕草や笑顔が可愛らしいから納得だ。


 でもモテるからこそ、しつこく絡まれたり面倒な目に遭ったりしてきたのかもしれない。彼らの疲れた表情や言葉にそんな苦労が滲んでいた。



 ちら、と右隣の奴に目線を移す。



「ん? はんふは?」



 視線に気づいた太郎が、大きなクリームパンを口いっぱいに頬張りながら返事をした。



「……」



 太郎も元気で人懐っこくて可愛いけど……なんだかなぁ。


 和樹や香と比べると、なんだかこの『昼でもないのにパン食ってる奴』が可哀想に見えてきた。



「頑張れ、太郎」


「……んぐっ。い、いきなりなんスか!? その目やめて欲しいっス!」



 ──こうして自習の時間が終わるまで、あたしは三人と一緒に喋り続けた。


 その後は窓の外や意外にも真面目に授業を受ける生徒たちを眺めているだけだったけど、気づいたら最後の授業が終わっていた。